歌えなくなって、ごめんなさい。《Taiga.K》

35 ページ35

Taiga








腕の傷はどんどん増えていく。
そーっと、傷を撫でる度に体が震える。


俺がこの世界に存在している唯一の印。








何回もやめようと思った。


みんなの顔が浮かんで、罪悪感に苛まれて、それでも欲には勝てない。



切った後に、あぁまたみんなを裏切った、なんて思ってまた苦しくなって、傷を刻む。








こんな姿、誰にも見せたくない、知られたくない。




………また、今日も欲が渦巻く。







そんな時に聞こえてくる




"京本くんは邪魔なんだよ"




あのプロデューサーの声。





だんだん、その声がメンバーの声に聞こえてくるんだ。







"きょも、邪魔なんだよね"



"大我が居なくなればいい"



"京本のことなんて、誰も待ってない"









［いやだ、…やめて］




声なんて出ないのに、叫びたくて、苦しくて。ねぇ誰かいっそのこと俺のこと、殺してよ。



でもその選択肢すら俺には与えられてないんだよ、どうすればいいの…、？









［たすけて、］








⠀









［ほくと］








今日、家には北斗しかいないから必死になってその名を呼ぶ。



通じるわけなんて、ないのに。









薄れていく意識の中、




「京本っ！」





焦って俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。









気づいてくれたんだね、北斗。




北斗が俺を抱きかかえる。





そんなに、悲しそうな顔しないでよ。









「ごめん」








謝らないでよ、



苦しいのは、辛いのは、









俺だけで十分なの。








・

36→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す