何て、残酷で、何て、優しい言葉 ページ49
あれから二年が経ったある日、俺は雨が降りしきる中傘もささずに歩いていた。
既に着ている服はずぶ濡れで髪は雨を滴らせながら顔に張り付いていた。
織田さんと子供達、親父さんが死んだのは二日前。
俺は子供達が爆殺された時、丁度フリィダムに行こうと歩いていた。
─二日前─
歩き慣れた道を歩いて居ると唐突に爆音が目的地であるフリィダムの方から聞こえた。
俺が走って行くと、其処には慟哭する織田さんともうもうと煙と嫌に紅い炎を揺らす車の残骸があった。
俺はその時口元から悲鳴が出そうになるのを手で抑えて、吐きそうになるのを耐えながら転がる様にフリィダムに駆け込んだ。
荒れた店内を見て首を振りながら声にならない思いを心の中で叫ぶ。
嫌だ、やめてくれ、お願いだから
そんな思いを裏切る様に厨房には親父さんがお玉とフライパンを持って心臓を撃ち抜かれてた姿があった。
「あ、あぁ、あ……」
瞳から自然と涙が零れ落ちる。
崩れ落ちそうになるのを、泣け叫びそうになるのを必死で耐えながら店を出て織田さんに近寄る。
「織田、さん」
「桐崎か……」
そう泣き尽くした織田さんが全てを、光を失った目で俺を見た。
その不確かな、今にも消えてしまいそうな友人を引き止めようとする。
嫌だ、死なないで、死にに、行かないで
「お、ださ、ん」
「済まない桐崎。お前の願いには応えられない。ただ、お前に頼みたい事がある」
そう言う織田さんを引き止められない事実に打ちひしがれそうになりながら、涙を溜めて尋ねる。
「なん、ですか？織田さんの、頼みなら、聞きますよ……友人、ですから」
「友人か……ありがとう桐崎……俺を追って死のうとしないでくれ。それと、お前の話なら辛いだろうが太宰を頼めないか？彼奴は早く大人になりすぎた、子供なんだ」
そう訴えるような口調に涙が落ちる。
何て、残酷で、何て、優しい言葉なんだろう？
俺が死なないように止めて、太宰との俺の関係を知る織田さんの言葉にただ、静かに声を荒げることなく泣く。
「分かり、ました」
「すまない」
そう、最後まで謝罪する織田さんは酷い人だと思いながら俺は小さくさよならと言ってその場を去る。
とめどなく溢れる涙を止めようとせずに。
───
暫くの間更新が出来ない日が続きます
悪しからずご了承くださいm(_ _)m
【桐崎君にとっての周りの印象】
乱歩：唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 305人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 倉の中の石さん» ありがとうございます！思惑通りに暗い過去と思って頂けてついガッツポーズを仕掛けました（笑）続編頑張りますね！！ (2019年7月8日 0時) (
レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石 - すごく面白いです。こんなに自然な暗い過去は久しぶりに見ました。続編も頑張ってください。 (2019年7月7日 17時) (レス) id: 873805d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 鶴さん» 読んで頂きありがとうございます！更新頑張りますね！！ (2019年7月7日 14時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです！更新頑張ってください！応援しています！ (2019年7月7日 14時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@スマホ使用不可で低浮上中(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます！まだ推敲中ですががんばりますね！！ (2019年7月5日 20時) (レス) id: a29dbc7b52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
