【文スト】幸福と不幸は紙一重

どれだけ願っても ページ37

ピチャン……ピチャッ…
地下室に水らしき物が滴り落ちる音が響く。
きっと水ではなく血なんだろうな。
そう思いながら寝返りをうつ。その度にジャラリと足と手についた枷の鎖が鳴るのに眉をよせて目を開けると深い先の見えない闇が広がっていて怖くなり目を瞑って耳を塞ぐ。
…暗闇が怖い。息苦しい。助けて。
そう弱音が漏れそうになるのを我慢する。
昔から暗闇は苦手だ。
何故だかは知らない。
何が原因なのかも。
俺は得体の知れない闇への恐怖に震えながら心の中で何度も呟く。
眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！眠れ！
眠らないと……
眠らないと何が有るんだ？
更に増えた恐怖に疑問が湧く。
だがそれを深く考える前に窮屈さを感じさせる枷がジャラリと鳴り思考が停止する。

「怖いよ……」

ポロッと涙が頬を伝う。
誰もいない地下室に俺の小さな泣き声と水らしきものが滴る音だけが反響していた。
俺は目をぎゅっと閉じ耳を塞ぎながら呟く。

「怖いよ…一人は……暗闇は……怖いよ……」

その瞬間理解した。
何故暗闇を、一人を怖がるのかを。
母を亡くしたあの日を連想させるからだと。
俺はそれを理解した途端ポケットに入っている白菊の花の飾りが付いたかんざしを取り出し抱き締めた。

「…………っ！」

どれだけ願っても帰ってこない母を思い涙が更に溢れた。
そして俺は意識を手放した。

「かあ……さん…いか…ないで…」

懐かしい母の顔を思い浮かべながら。

手が届かない→←幸せな日々に戻れたなら

【桐崎君にとっての周りの印象】

乱歩：唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。

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