果たされない約束 ページ31
それはある日の出来事。
俺が希望を抱く様になった日のことだ。
何時も通り太宰の自 殺を阻止すると太宰が不機嫌な顔で拗ねた口調で言いはなった。
「何なのさ君?僕は死にたいのに何で邪魔するの?しかも初対面なのに馴れ馴れしいし鬱陶しいんだけど?」
その言葉を聞いたとたん元々毎日会う事に忘れられ疲れ果てていた俺の精神がプツンと切れた。
俺はただ衝動のままに太宰の胸ぐらを掴み怒鳴った。
「ふざけんなよお前?!此方だってお前みたいな死に損ないのやつを一々助けなきゃいけねぇし面倒臭いんだよ!森さんの頼みだから看てやってんだ!その癖お前はそう言うのかよ!毎日お前に一日経つ事に忘れられて何で俺がつらい思いしなきゃなんねぇんだ!お前みたいな身勝手なやつ大っ嫌いだ!」
感情のままにそう怒鳴り太宰を床に叩きつける様に手を離して荒々しく扉を開けて病室から走り去った。
怒りに任せて闇雲に走り続けているといつの間にか知らない所に立っていた。
「知らねぇ所に来ちまった…どうしよう」
そう呟き辺りを見渡す。やはり一度も見たことのない知らない場所で心細くなる。
「どうにかして帰んないと」
とりあえず来た道を戻るが覚えていない道の方が多すぎてさらに知らない場所に出て泣きそうになる。
「森さんとエリスの所に帰んないと……」
ほとんど泣く寸前になりながらも言ったその時。
「君、走り去るのは良いけど行き先くらい知った所にしなよ。おかげで僕が探さなくちゃいけなくなった」
「あ……太宰」
予想外の人物に目を見開いていると太宰が手を差し出し言う。
「ほら、帰るよ。それと…何も知らないで言ってごめん」
「あ、うん…俺もわかってんのに怒鳴ってごめん…」
「僕が悪いから君は謝らなくて良いの!もう!僕の面目が立たないでしょ!」
そう言う太宰に俺は少し笑う。
すると顔を背けながら太宰がくちごもりつつも言った。
「ねぇA君。僕、いつか君が誰にも忘れらない様にその異能を解いてあげる。絶対にもう僕や皆が忘れない様に」
その言葉に俺は心の底から喜びながら頷いた。
「あぁ、待ってる。だから約束だ。俺を忘れても絶対に解いてくれよ」
「当たり前でしょ。僕を誰だと思っているんだい」
そう言った後俺と太宰は指切りをして笑った。
絶対に果たされない約束だとしても本当に嬉しかった。
なぁ、太宰。
何時この呪いを解いてくれるんだ?
解けないと分かっていても俺は希望を捨てきれなかった。
だけどもう、無理だ。
約束と言う鎖に締め付けられて苦しくてもう息が出来ないんだ。
…御免な…太宰
【桐崎君にとっての周りの印象】
乱歩:唯一異能で一度自分の事を忘れた筈なのに覚えてくれた人物。推理だけで自分との関係を割り出した乱歩の事は本当に凄いと尊敬している。
305人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 倉の中の石さん» ありがとうございます!思惑通りに暗い過去と思って頂けてついガッツポーズを仕掛けました(笑)続編頑張りますね!! (2019年7月8日 0時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
倉の中の石 - すごく面白いです。こんなに自然な暗い過去は久しぶりに見ました。続編も頑張ってください。 (2019年7月7日 17時) (レス) id: 873805d7e2 (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@グラブル中毒者(プロフ) - 鶴さん» 読んで頂きありがとうございます!更新頑張りますね!! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 480a6a9b45 (このIDを非表示/違反報告)
鶴(プロフ) - 初めて見たんですが、とっても面白いです!更新頑張ってください!応援しています! (2019年7月7日 14時) (レス) id: 2141c8a0fe (このIDを非表示/違反報告)
那戯田沢 亜須@スマホ使用不可で低浮上中(プロフ) - 夜美さん» ありがとうございます!まだ推敲中ですががんばりますね!! (2019年7月5日 20時) (レス) id: a29dbc7b52 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ