第一話/龍神切吉光 ページ1
踵をすりおろすように素早く踏み下ろされた足はぎしぎしと床を鳴らす。
透き通るような青色の瞳が特徴的な少年は硬い表情で一つの襖の前に立ちはだかった。
その襖越しに大量の人影がいるのが確認できる。少年は一度息を吐きふすまを開けようと手を伸ばした。
「ッ主!」
大声で叫べば上座に腰を下ろしている一般男性よりも一回り小さい男が振り向いた。
顔には、審神者と書かれた紙が貼られており、面貌が見えない。しかし、なぜだか微笑んでいるように思えた。
「どうしたんだい? 龍神切」
「どうしたもこうもッ……」
「龍神切」
少年の言葉を遮って男性は静かに少年をその腕の中に包み込めばもぎとられた端の言葉が宙浮遊した。ふわりと、男からさわやかな匂いが漂ってきて、鼻をくすぐる。
「君はいつも無表情だったのにね。こんなにも湛えるなんてね」
いいこ、いいこ。
まるでそういうように男が少年の頭を一つ、撫でる。
「ッ僕、は……っ」
少年の目線が、床に投げかけられた。
やけに、息の吸う音が鮮明に聞こえた。言ってほしくない言葉がなぜか頭の中で繰り広げらればくばくと、心臓は大きく音を上げた。冷や汗が頬を滑り、地に落ちれば四方八方に飛び散った。主の優しい声色が耳の奥にこびりついて、取れなかった。
「……――――」
まるで、時が止まったようだった。小鳥の歌声も、草の囁きも聞こえず、元々静かであった大広間はさらに静寂さを放つ。
少年は勢いよく視線を上に滑らせた。
男が放つその雰囲気は絢爛ともまた訳が違うのだけれども、美しさ、華やかさににた何かを纏っていた。
「……三日月。龍神切を宜しくな」
「……あい分かった」
男が立ちあがれば、奥からスーツを着た男が現れる。その顔には一切表情というものが現れておらず、口にしたその言葉にも感情が宿ってなく、ひどく無機質であった。
「ッ……あ、るっじぃッ……」
少年が己は何もできなかったと突き付けられた事実に唇をかみ涙を流せば、三日月と呼ばれた男は静かに寄り添った。
“じゃあね”
悪魔の囁いが脳裏を強く蹴り飛ばした。がんがんと酷く頭が響き、いやになるほど悲しくなった。
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赤黒 柚子見(プロフ) - セレーネーさん» 長くコメント残してしまったかもと思いましたのでパスワード記載のコメントは削除させて頂きました。もしまた知りたい場合はもう一度お願いします。 (2020年6月7日 14時) (レス) id: 06134be286 (このIDを非表示/違反報告)
セレーネー - パスワードは何ですか? (2020年5月24日 21時) (レス) id: 449f884b9a (このIDを非表示/違反報告)
セレーネー - 1回目の更新します! (2020年5月24日 19時) (レス) id: 449f884b9a (このIDを非表示/違反報告)
蒼の火(プロフ) - 3回目やります (2020年4月20日 17時) (レス) id: 330cc05ab0 (このIDを非表示/違反報告)
月夜(プロフ) - 次、2回目やります (2020年4月20日 16時) (レス) id: 3003a1c972 (このIDを非表示/違反報告)
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