にびいろの空【完結】 (ページ5)

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雲間がいつつページ5

翌日外はどんよりとした曇り空だった
これから梅雨に向けて少しずつ天気が崩れ始めるらしい
暫くは自転車で登校することはできなさそうだ、その前に昨日持って行ったままだから持って帰るところから始まるけど

いってきまーす。

いつもより少し早めに出て、天気予報で雨が降るというから大きい傘を持つ
部活の朝練は基本はない、だからゆっくりと学校へ向かうことができる

家でギリギリまで寝ている先輩はいつも遅刻ギリギリでこの道を走るらしいが、自分は走ること自体が怠いので余裕を持って家を出る

だってこんなジメジメした時に朝から走ったら気持ち悪くなるじゃん
それにこんなことで疲れたら眠くなるし、まぁ授業は寝るけど

昨日通った畦道を歩き、アイスを食べた駄菓子屋を過ぎた頃不意に畑のずっと向こうに人影を見た

なんとなくそっちをみた時、不思議な感覚がした

騒がしかった虫の声も、じめじめとした湿気独特のベタつきも、風に靡く草木の動きも何も気にならなくなった
何も感じられなくなった

…。

何かに取り憑かれたかの様にその存在に釘付けになった
それは小学校高学年くらいの少女、サラッとした薄い紫色のワンピースに白地に色んな紫色の幾何学模様が入った傘を差していた

傘の影に隠れ顔は見えなかったが長く柔らかそうな髪が風に靡いていた

誰だ？

そう呟くとその子はゆっくりとこちらを振り向いた
はっきりと見えているはずなのに明確にならないその顔をじっと見つめていると口元が動いた

もっとはっきりと聞き取ろうと足をすすめる
どんなに近づいても聞き取ることのできないその声に苛つきせめて口元をよく見ようとしたところで急に後ろに引っ張られた

A！！
お前何してんだ！！

えっ…。

朧げな意識が覚醒するとその一歩先には雨でいつもより増水した川があった