雲間がはたちあまりななつ ページ27
あの日もこんな梅雨の時期だった。
妹はね、ずっと病院にいたのさ。
重い病気でねぇ。
だから私は毎日毎日、お見舞いに行ったさ。
ただね、歳を重ねれば時間がどんどんなくなっていく。私は自分にかまけてだんだんお見舞いに行く頻度が落ちていってね。
その代わりに手紙でやりとりしてたんだ。
それがこの便箋、あの頃はみんな手紙を書いたもんさ。
懐かしいねぇ。毎日毎日書いて、行けない日は親に頼んで、ずっと送っていたさ。
ある時に将来の夢について話し合ったんだ。
病気が治ってなんでもできるようになったら何をするか。
2人でいいたのさ、『駄菓子屋さん』てね。
ふふふ。さすが双子だと思ったさ。理由も同じ『お菓子に囲まれたいから』。
だから約束したのさ。
ずっと2人で一緒にいようって。
だけどねぇ、あの日、あの子にとっての入院が初めての外出の日。あの子は天国に行ったのさ。
待ち合わせは川の近くのバス停。
楽しかったのさ。お出かけみたいで、プレゼントを持って待ち合わせして、楽しく1日を過ごすはずだった。
でも、雨の時点で止めるべきだったのさ。
久しぶりに会えるあの子との待ち合わせ。着くとそこには誰もおらず、両親と共に探し回り。
後日、川の下流で見つかったのさ。
ろくに話もできず、顔を覚えることもできず私たちに別れが訪れたのさ。
後悔した、なんで一緒にいなかったのか、なんで会いに行かなかったのか、なんで迎えに行かなかったのかと。
それで私はここにいるんだ、あの子の向かう予定だった花畑の場所で駄菓子屋を開いて、あの子が来るんじゃないかってね。
私なりの懺悔さ。
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作者名:あげのり | 作成日時:2022年5月21日 20時