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「 いらっしゃいませ 」








あの夜、特に音沙汰なく彼と別れた私は


どこかに寂しさを抱えたまま仕事をしていた。








確かに平野さんと会っていたはずなのに


どうしてこんなにも心に穴が空いたみたいに


寂しい気がするんだろう。








恋愛経験の浅はかな私では分かりっこないけど


どうにかこの気持ち悪さを取り除きたくて


毎晩のように平野さんの動画を見つめていた。








動画を見たからと言って、


肝心の問題が解決するかと思えば


そんな事は決して無くて。








自分でも可笑しいと、思い始めていた。








ショーケースに並ぶチョコレートを眺めて


大きく溜息を吐けば、先輩が近くにやってくる。








「 まーた溜息ですか 」


「 え? 」


「 さっきから吐きっぱなし 」








私の口元を指差して呆れたように放つ先輩に、


仕事に集中していない事を怒られるのかと思えば


特に咎めるようなことはされなかった。








それどころか、








「 プライベート、いろいろあるだろうけどさ。
笑ってりゃ、意外と何とかなるもんだよ 」








先輩は少しの間、やりかけの作業を止めて


切なそうに私の事を見流した。








そのアドバイスは、いつもより大雑把で


先輩らしくもない根拠の無い精神論だった。








いつもなら具体的なアドバイスだったり、


口煩いほどの世間話をふっかけてくるはずなのに


今日に至っては真面目な雰囲気。








私の溜息が多かったせいなのか、


カウンターでの口数は少ない方だった。








静けさに耐えかねてカレンダーを見てみれば


もうすぐバレンタインデーの日にちで


だから客が多いのか、と納得した。








接客をしながら先輩に目をやってみると


いつも通りの愛嬌満点の笑顔を浮かべていた。








さっきまで真面目な話をしていたとは


到底思えないほどの明るい表情で


あれは気のせいだったのかもしれないとさえ思えた。








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さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - あぐた。さん» わぁぁぁぁぁ!ありがとうございます!! (2020年2月21日 21時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - さくらんぼ&チェリー@サブさん» コメント、ありがとうございます。ベテランだなんて…まだ投稿を始めて数ヶ月も経っていない未熟者です。また作品読ませて頂きますね!(^^) (2020年2月21日 1時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ&チェリー@サブ(プロフ) - いんこです!hit数がスゴい……ベテランさんですね! (2020年2月21日 1時) (レス) id: 8fd736f5ec (このIDを非表示/違反報告)
あぐた。(プロフ) - ゆかさん» コメントありがとうございます。ただいま下書きをしております。公開予定は今週末を予定しておりますので、もう暫くお待ち頂ければ幸いです。 (2020年2月18日 10時) (レス) id: b86c6074bc (このIDを非表示/違反報告)
ゆか(プロフ) - いつも読ませて頂いています!是非新作も読ませて頂きたいのでパスワード教えて頂きたいですか (2020年2月18日 10時) (レス) id: ad4f41f45e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あぐた。 | 作成日時:2020年1月25日 21時

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