私の天使4

中学3年生 ページ9

「…看取り、たいな」


冗談交じりに言った一言やったのに
繋いだ左手に力が入り

空気が重くなったのを感じた


『…しょ』
「さー、今日の晩飯なんやろなー♪」


章ちゃん…？

言いようのない不安が
不意に訪れた

この感じを味わうのは2回目

前は…いつやったっけ




────────────────




春


章ちゃんは希望通りI高校、
亮ちゃんも美術科のあるR高校へと進学した


私は中学3年生に


章ちゃんのおかげもあって
成績がイッキに上がり、
このまま進めば推薦をもらえそう

っと言っても音学科なので
実技試験はあるんやけど…




日々部活とレッスンに明け暮れる毎日

忙しいこともあって
章ちゃんとあうのはまた土曜日のみ

新学期になって3回目の土曜日

新入生の仮入部の段取りなんかの
リーダーミーティングが長くなって
川に行けたのは18時前


夕日が刺すいつものベンチから
数人の笑い声

章ちゃんの甲高い笑い声も
聞こえてくる

…誰かといるんかな？

ロングヘアのI高の制服の女の人と
章ちゃん、亮ちゃん

……誰なんやろ


近づいてみると
章ちゃんが気づいて手を振ってくれて
ちょっとホッとした

「おつかれさん」

いつもの優しい笑顔に
心の底から癒される

『ごめん、遅くなって』

「ほんまやん、こんな時間や。
どうしたん？
先生に怒られてたん？」

こんな時間やって…
いつもやったら鬼のように心配してくんのに


『あ、ううん。ミーティング。
もう仮入部始まるし段取りとか…』

チラッと女の人の方を見ると
すごくキレイで思わず2度見


「あ、俺と同じクラスの野口アツコさん」

『あ、は、は、はじめまして』


うわぁ、高校生って感じ

ひとつ上とは思えへん大人っぽさ


アツコ「はじめまして。野口です。
しょーた、こちらは？」


……しょー…た？？？

呼び捨て……？？


「あ、えーと近所の子やねん」


『…………』


近所の…子？？


衝撃な発言に
足元がフラついた


アツコ「そうなんや。かわいい子やね。」

亮「こいつ楽器めっちゃうまいねんで」

アツコ「へー、そうなんや。
いいな。楽器できるの羨ましい。
名前なんて言うの？」

『…………』


「あ、っと山田A。
南中の3年生やねん…。」

アツコ「Aちゃん。これからよろしくね。」


これから・・・？
何をよろしくすんの？

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