曖昧(青)

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章大に見つめられるのが恥ずかしかった。



照れて目を逸らしてしまうのはいつも私で章大はそんな私を可愛いと言ってキスをくれた。



だけど今日。



私は目を逸らさなかった。
目を閉じることもしなかった。



章大の優しさで彼女に言えない秘密を作ってほしくなかった。



章大は優しい人なの。
彼女をとっても大切にする人なの。



その彼女はもう私じゃないし
そんな私が偉そうに言うことじゃないけど



ずっとずっと変わらずにいてほしいの。
私が好きになった章大でいてほしいの。



やっぱりワガママな私でごめんね。



｢……会えて良かった｣

｢章大……｣

｢もっかい、ちゃんと会いたかった｣



私の目に浮かんだ涙を優しく人差し指で拭ってから
キスを諦めた章大はそっと私を抱きしめてくれた。



でもその腕にさっきまでの恋の予感はなかった。
優しいだけの、愛しさを失ったさよならのハグ。



｢バイバイ、A｣

｢……っ！｣



それなのに、どうして。



スマホが鳴っていた。青信号で動き出した人混みの中でこちらに向かって誰かが手を振っていた。



それでも章大は私のおでこにキスを落として、そして振り向かずに人混みの中に消えていった。



まだ好きでいてね、と言わんばかりに。
恋の続きがいつかどこかにあるように。



私はまたあなたのキスの魔法で次の恋に進めなくなってしまうというのに_____




fin.

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