アマリリス (ページ42)

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素直にページ42

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『いらっしゃいませ』

ドアを開けて入ってきた一人の男性。

隼くんかも、なんて思ったけど全くの別人。

ましてや、初めて見る人だ。

その男の人はカウンターの真ん中の席に座って
エスプレッソをひとつ頼んだ。

哲也「初めて見る顔だね」

『･･･ブラックかと思った、』

哲也「いや、そこ？」

30代半ばぐらい。

服は私服って感じで、髪型も髭もボサボサしてないし、
普通の男の人だけど、何かが違う気がする。

『･･･どうぞ。』

それはきっと、一度も外れない目線。

じーっと強く見つめられている気がする。
ううん、気がするだけじゃない。

あの人は確実に私から目を離していない。

北人「･･･あの人、ずっとAさんのこと見てる」

『･･･なんか怖い』

北人「Aさんは厨房で仕事しててください。今日の接客は俺がやります」

『ありがとう。助かる』

哲也さんも男性客に異変を感じて
私を中での仕事へと変えてくれた。

･･･なんで今日に限って隼くん来ないんだろう。

ここ毎日昼間に来てくれてたんだけどなぁ。

やっぱり彼は芸能人。
仕事も不定期だ。

北人「あの人、抹茶テラミスとチーズケーキ食べてました」

『･･･そうなん、だ、』

北人「･･･そろそろAさん終わりだけど、送ってかなくて平気ですか？」

『うん、大丈夫。ありがとう北人くん』

厨房から見えるカウンター席のお客さんの顔。

目が合ってしまうのが怖くて
哲也さんに挨拶だけして店を出た。

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「あの、」

『･･･っ、』

「ちょっと話しませんか」

『･･･ごめんなさい、』

「あの、少しだけでも」

『･･･いやっ、いやですっ、』

「少しだけ、少しだけ、お話しましょう」

『･･･っ、！』

男の力には適わない。
いつしか隼くんが言ってた。

さっきの男性客に腕を掴まれて裏路地に連れていかれ、
反抗もできないまま、壁に押し付けられる私の腕とからだ。

全体を舐め回すような視線が気持ち悪い。

さっき、北人くんに甘えればよかった。
そう思ってももう遅い。

怖くて、震える私のからだに力は入らない。

もうされるがままだ、と
男の顔が近寄ってきて目を瞑った。

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