アマリリス (ページ21)

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気のせいページ21

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カウンターのお客さんが座る側の席に腰掛ける。
出入口のドアの外は屋根から水滴が落ちてるのが見える。

『･･･雨か、』

「Aさん雨嫌いなんですか？」

『わ、北人くん！』

「僕は好きです、雨」

今日は彼と2人で店番です。

打ち合わせがある、と自営業のくせに何言ってるんだか訳の分からない店長、哲也さんは今日はお休み。

気分の上がらない天気。
今日は隼くんに来れないと連絡が来てたし、雨の日は特に客足が減る。

北人くんは店員側のカウンター席に座った。

向かい合わせの私たち。
こうやって向かい合うのって何気に初めてかも。

『綺麗な顔してるんだね、北人くん』

「なんですか、急に」

『ううん、別に』

北人くんは席を立って厨房の奥へ入っていくと、飲み物を2つ手に持ってきた。

「今日は俺の奢り」

『ふふっ、ありがとう』

一口飲めば広がるコーヒーの匂い。
ちょっと苦めだけど蜂蜜とミルクを少し入れる北人くんブレンドは好き。

「･･･俺、好きな人出来たんです」

『･･･え、』

「･･･何その顔」

『あ、いや、北人くんにも好きな人ってできるんだ』

「バカにしてます？」

『いやいやしてないしてない！北人くんって人間に興味無さそうだったから』

「･･･まぁ、その人だいぶ変わってる人なんですけどね」

『へぇ、北人くんの好きな人かぁ』

ぽん、と頭に浮かぶのは
髪の毛は肩ぐらいの明るい茶色とちょっとくせ毛。
メイクは薄めで、笑った顔が優しい。
小柄で守りたくなるような子。

うん、北人くんにぴったり。

『その子、どんな子なの？』

「バカで天然でアホで、でもしっかりしてて人のことを自分より大切にする。きっと俺がどんなにアピールしたって気づかないような鈍感な人」

『ねぇ、北人くんそれ、本当に好き？』

「好きな人の欠点ってなぜか好きになったりするし、こういう所があの人のいい所で好きなところだから」

『へぇ、大好きなんだね、その人の事』

「片思いだけど」

ちょっと胸がズキッ、となる。
北人くんに好きな人ができた。いずれは彼女ができる。
こうやって2人でのんびりお話できなくなる日が来るのかな。なんて考えたら悲しくて寂しくなった。

『北人くん、その人と上手くいっても一緒にいてね』

北人くんの耳が赤いのはきっと寒さのせい。

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