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反田が帰ると部室には円堂と神童だけが残った。少しして神童が切り出す。
「監督。……俺、この間の試合でずっとやりたかった試合ができて嬉しかったんです」
円堂は黙って耳を傾ける。
「これからも続けていきたい。それで自分はどうなっても構わない。自分が責任を取るだけだって。キャプテンとして他の部員の事を考えているつもりでした。でも……結局は、自分だけしか見えてなかった」──神童の頭には南沢脱退の騒動が鮮明に蘇っていた。
「……」
「俺どうすれば……、分からないんです。一番いい方法が何なのか。さっきはああ言ったけど、俺は本当に勝利を目指すなら剣城ではなく典子を出すべきだって思ってます。もっと根本的な話をするなら、フィフスセクターに逆らう事で皆が、部がバラバラになってしまうなら、俺がやっている事は無意味なんじゃないかって……」
神童の瞳が潤む。キャプテンとして苦悶する姿は部員には見せたくない。こうしてやっとの思いで監督である円堂に吐露したが、堰き止めていた分だけ感情は大きく流れ出した。
「神童。……すぐに分かるさ。答えはフィールドにしかない」
「円堂監督……」
「俺が雷門に戻ってきた理由、聞いてくれるか？ 」
頷く神童を見て、円堂が話しはじめる。
「フィフスセクターを倒す為だ」
「フィフスセクターを、倒す……！？ 」
フィフスセクターを倒す。確かにフィフスセクターが無くなれば、シナリオが無いサッカーに戻る。
自身がサッカー部に入った時には既にあった組織だ。ある種フィフスセクターは絶対にあるものとして刷り込まれ活動してきた神童にとって、円堂の目的は思いつく様でいて思いつけない突飛な発想だった。
「成績や学校の評判の為にやるサッカーは本当のサッカーじゃない。フィフスセクターは間違っている！ だが相手は強力だ。俺一人じゃ倒せない。だから探しに来たんだ、神童。お前みたいな仲間を」
白い歯を見せて笑う円堂に、神童は心の靄が晴れた気持ちになる。太陽みたいな人だ──円堂の言葉には一切の嫌味も媚もなかった。
「だが俺の考えを強制はしない。それじゃフィフスセクターと同じだ。あくまで自分で決めるんだ。お前も剣城も、倉間も、皆。そしてそれがどんな結果になっても受け入れるよ。それが今の俺ができるお前達とサッカーへの償いだ」
彼の最後の言には苦味があった。海外に渡り、日本のサッカー界の惨状を放置した自責の念が込められていたのやもしれない。
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー！ あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (
レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー！！！ あああ一話目から面白そう……！！ え、え、めっちゃ楽しみです……！！ 更新待ってます！！ あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……！ (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：やに | 作成日時：2021年7月12日 10時
