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「入部希望です! 」
途端彼の顔が苦虫を噛み潰した様なものへと変わる。しかしその怖い顔もすぐに消え、短く息をつくとあくまで柔らかな口調で続ける。
「そうか。丁度マネージャーの空きは沢山あるから、選考は無しで入部出来ると思う」
「ん……? そう、ですか」
色々と引っかかる言葉だが、一番気になったのは「マネージャーの枠に空きがある」という点だ。
サッカー至上主義のこのご時世、サッカー部のマネージャーに空きがあるなんて事あるのだろうか?
サッカー部に選手としては原則登録不可能な少女達は、内申点の為少ないマネージャーの枠を勝ち取ろうと日々戦っているのに──名門の雷門中が、まさかまさかのマネージャー不足? 希望者が多過ぎて殺し合いでも起きたのだろうか?
「マネージャーの椅子を賭けたデスマッチ……女の仁義なき戦い……」
私が顎に手を当ててそんな事を考えていると、彼はバツの悪そうに頭をかく。
「えっと、自己紹介がまだだったな。俺は神童拓人。雷門中サッカー部のキャプテンだ」
「神童さん……えッ! キャプテン!? 」
「あぁ」
「すごーい! 雷門中でサッカーするだけでも超凄いのに、キャプテンだなんて! ……ん? あ! タメ口きいてごめんなさい、えっと凄いです神童さん!! 」
慌てて敬語で訂正し、たははと笑ってみせる。そんな私を見て、ずっとどこか硬い表情だった神童さんは緊張が解けた様だった。彼は花が綻ぶ様子を思わせる上品な笑顔を浮かべた後──朝練が始まるしサッカー棟へと案内するよ──と言い、目の前の校舎へと歩いていく。あれ、もしかして私サッカー棟の目の前で迷子になっていたのかな?
「わぁ……! 」
広く青々とした人工芝のフィールドを見て、うっとりとしてしまう。
「ここがサッカー棟のフィールドだ」
「校門くぐってすぐの場所にもグラウンドがあった気がするんですけど」
「そうだな。放課後はそっちをメインで使う事が多いんだが、ここなら雨天時でも練習ができるし更衣室からも近い。朝練は専らサッカー棟のフィールドを使っているよ」
流石雷門中学校。私立とはいえサッカー部にかける費用が公立校とは比べ物にならない。
「あれ」
待てよ?
「朝練って、ここでやるんですよね? 」
「あぁ」
「なのに」
何で私と神童さんしか、ここにいないの?
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やに(プロフ) - 杳覇さん» くらちゃんコメントありがとうございます(^^) 頑張りますー! あと早速誤字やらかしているので、読み直し徹底して行きたいと思います恥 (2021年7月12日 10時) (レス) id: 73f24c4202 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - よっしゃ新作きたーー!!! あああ一話目から面白そう……!! え、え、めっちゃ楽しみです……!! 更新待ってます!! あとその、「急な転向」って「急な転校」ではないでしょうか……! (2021年7月12日 10時) (レス) id: 7468c0248e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やに | 作成日時:2021年7月12日 10時