れ ページ2
持ってきていた鞄に無造作に手を突っ込むと、一つだけ入れていた赤い袋を手に取った。
中身が潰れていないか確認すると、目の前で、ヒーロー…。と呟いている彼に再度目を向けた。
「ぼく。お願い……いや、任務を任せたいんだけど……いいかな。」
“任務”という久しぶりの響き。
赤い袋を両手で持ち直すと、不思議そうに首を傾げる男の子に差し出した。
何かを連想させるような紅い袋。それに掛かる鴬色のリボン。
あの長いようで短い六日間を詰め込んだそれを、小さな小さな手に託した。
じゃあね、と手を振りながら駆けて行く彼を見送ると、重い腰をゆっくりと引き上げた。
「米良さんによろしくね。友幸くん。」
夕日に背を向けるように一歩踏み出す。
……が、それ以上進むことは出来なかった。
「ねぇ……僕の、最後の任務、……やっと終わったよ、アイボット。」
もう会えない、一つの……いや、一人の仲間に向けて呟いた言葉は、果たして届いただろうか。
そんな僕の目に映るのは、明るく平和な世界。
僕が。……いや、僕達が守った世界。
無意識に伸ばした手には、何も無い。
触れた腕にも、傷一つ残っていない。
太い針を突き刺した跡など、文字通り、どこにも。
「理不尽な世界だよ。……ほんと。」
脳裏に浮かぶのは、たくさんの空想。
いつか姉に話した山を、誰かと共に登りきる夢。
忙しい毎日を、たくさんの仲間と過ごす夢。
━━━そして、また彼と笑い合える夢。
いつの間にか視界を歪ませていた涙を拭う。
後から後から流れて来る、止まることを知らないそれは。
「ずるいよ、米良さん……っ、僕だけ、僕だけなんて……。」
あの彼の力に良く似た、そんな頼もしい暖かさを持っていた。
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