ハロー！スプリング ym×in

弱みを握らせろ ページ2

伊野尾ちゃんにはとにかく隙がないのだ。

人前で泣いたり、怒ったりしない。
表情もあまり変わらないし、メンバーの前ではいつもにこにこ、へらへらしている。

裏の顔があるのならば、知りたい。


…でも、これは建前であって。


俺、伊野尾ちゃんの事が好きなんだよね。
何故って言われるとすぐには答えられないけど。
気が付くと目で追ってしまうような、気になる存在だった。
それが恋だって思ったのは、１年前くらい。

もっと近付きたい、触れてみたい、そう思ったのは最近だ。


…でも、俺がこのまま告白したらどうなると思う？

答えはひとつ、確実にふられる。

だって、隙のない伊野尾ちゃんは俺の告白なんてするりとかわして捕まえられそうにないんだもん。

さてどうしたものか、ここ最近頭を捻らせてたどり着いた結論、それが…



弱み握って告白しておっけーさせよう作戦なのであった。



…いや、ちょっと非道すぎるかなとは自分でも思うけど、

でも、今は伊野尾ちゃんに意識してもらうステージにすら立ててない状況なのだ、とりあえずそこに立ちたい。

そんで、まずポーカーフェイスをぶっ壊す！
そして少しずつ俺のことを意識させて、最終的には好きにさせてやるんだ。



「……ふ、抜かりない、完璧だ」

「何言ってんのやまだ？」

「なんでも？さ！飲も飲も！」



伊野尾ちゃんが勝手に頼んだハイボールが届き、ひと口飲んだ。
横目で盗み見ると、えへへ、なんて言いながら枝豆をちびちびと子どもみたいに食べている。
あざとい仕草はいつも通りだけど、

…なんか、無防備。


「伊野尾ちゃんはさ、俺の事どう思ってる？」

「ん？やまだのこと？」


手始めに酔っていないと聞けないような質問をしてみた。
案の定、伊野尾ちゃんは特に気にした様子もなく「ん〜…」と考え始めた。


「山田はねぇ、小さくて可愛くて、弟みたい！」

「……」


あ、やば心にダメージが…

背低いし、実際年下だから弟のようと思われるのはメンバーとしては光栄だし、嬉しいけど…

そんな風にしか見られてないのショック…。

結構ガチめに落ち込んでると、伊野尾ちゃんは目をぱちくりさせて俺の顔を覗き込んできた。
あざとさ異常なんですけど…。


「やまだー？何沈んでんの？？」

「…とりあえず、全然そういう対象で見られてない事は分かった…」


いいんだよ、本題はここからなんだから…。

らしくないじゃん→←絶好のチャンス

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