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今度は自分が頑張らなきゃ

雲羽は酷く疲れ、ゼェゼェと肩で息をしていた

御手洗の体は一秒一秒時を刻むたび、少しずつ大きくなっていく。僕には、何ができるのだろうか?そもそも何かできるのだろうか。

こんな時に思い出すのは、今までの僕ら。一時的でも楽しかった日々。もう、すぎてしまった時間であった。

「え…っ」

思いっきり美文に刺されたところに力を入れた。急いで雲羽の体をふらふらしながら持ち上げ、膝の裏と首を支える。そして今創れる最大限の大きさに羽を出した。

『伏せて…』

そう雲羽に呟いた

ここまでに10秒ほど。御手洗さんは僕の膝ほどの大きさになっており、標的の足を掴もうと異常なスピードで追いかけてくる。

嗚呼、何だか頬が緩む。気持ち悪いほどの笑顔になってるだろう自分の顔が勇気の象徴とかおもってしまうのは、自分が完璧に異常になってしまったからだろうか。命を失うかもしれない危機が今楽しくて仕方がない。

自然とスピードが上がり、窓を打ち破る。ガシャン、と耳に痛い音がする。片方の羽で雲羽にガラス片が飛ばないように守りながら三階ほどの高さから飛び降りる

残り三十センチほどのところまできて、羽が急成長。僕の身長くらいに大きく伸び、風圧に耐えながら、急上昇。御手洗は愚か、今までいた建物も見えなくなってしまった。

「待って。透明にするから、そのまま飛行…続けて」

今まで信じられないものを見たように絶句していた雲羽が世間的にバレてしまったらいけない才能。その存在を隠す、透明化が発動される。

僅かなガラス片が舞う世界。雲羽の魔法とガラス片を見紛うほどキラキラした綺麗な世界。
「ねえ、とても綺麗だと思わない?」

ふふ、と微笑みながら僕の方を見る雲羽。僕は顔が熱くなるのを感じた。

こういう時に限って声が出ない。だから、こくりと頷くことにした。

「目的地のない飛行っていうのもへんだし、表の世界に逃げる?」
しばらく飛んでいると雲羽が僕に問いかけた

雲羽の瞳が険しくなったのを尻目に精神を集中させる。戦うことのスリルについての興奮状態に陥った頃が一番扱いやすかったのだが、落ち着いてきたころに精神への疲労がドッと来た

『…御手洗さんは、表の世界に来れるの?』

男として頼りない声

「清作さんの力を使えば恐らくできると、思う」

ただ、迷惑かけたばあちゃんが心配だった。

『もうこれ以上、迷惑かけたくない』

「そっか…」

雲羽は柔らかい笑顔でそう微笑んでくれた。

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作者名:白井ユエ | 作成日時:2021年5月24日 18時

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