続き ページ10
瞬きをした瞬間
本丸は姿を変えた
次は離れ､あの女が来てからはずっと兄さんとリーダー､僕で過ごしていた
障子は破れていて所々に乾いた血が付いている
壁も同じく乾いた血がこびり付いていた
「あの時のかなぁ…」
恐怖で体が震える
今は逃げられたのに、体はあの恐怖を覚えている
「っ今は歩かなきゃ、兄さんが…」
自分を奮い立たせ足を動かす
僕が向かっている大広間は本殿の中でも審神者部屋の次に綺麗だった
「っ皆んな…」
大広間の中に居るのは
僕達兄弟を殴っている
昔の僕は目の光が消えかけていて、耳も尻尾も千切れていた
「邪魔くさい」「早く消えろよ」
僕から血が出て畳が赤くなる
「チッ汚いなぁ…早く拭けよ」
けれど僕は動かない
…そうだこの時の僕はどうしたら別の場所へ行けるか考えてたんだっけ
そうしたらコイツラからリーダーを守れたから
結局､出来なかったけれど
本丸は一気に夜になる
昔の僕は鎖を繋げられ、審神者部屋に連れて行かれる
女「あらやっと来たの?
早くその拘束具を付けて」
女はニタニタしながら縛られていく僕を見ている
手は後に縛られ、動けない
覚えている、あの時の夜
帰るのが遅くて兄さんが来てくれたんだっけ
ｽﾊﾟﾝｯ
ほら､来てくれた…
白露「俺の弟に何してやがるクソ尼!!」
兄さんは僕に付いた拘束具を断ち切って離れに運んだ
白露「なんでお前だけが狙われるんだ…」
そう言われても分からない
僕はただ上質な玉鋼で作られただけ
兄さんは沢山の命を救ったと昔聞いたことがある。
偉い人や子供や妊婦、老人などと色んな人を救ったって
なのに僕はそんなに人を救ってはいない
妖浪を絶って、戦争に使われて結果砕けた。
僕はこれから生きる人達を救ったと言われたけど
僕的には
安心して、愛しい人達を思い永久に眠りたい。
僕は『白銀の矢』
兄さんは『紅の夜桜』
そんな別名で呼ばれるときもあったけ…
今考えても格好よくない別名
「…もうよそう。
そんな昔のことを考えるのは」
空に浮かぶ満月を見つめる。
淡くも力強い月光。
まるであの刀の様で、そして幸せが終わるときに登るあの時の月をも思い出させる
「幸せが奪われるのは僕だけでいい」
ポタッ
生暖かい物が頬を伝った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠扇 | 作成日時：2022年3月30日 2時
