THE FIRST SLAM DUNK 宮城編➉ ページ42
辛いことは人に話を聞いてもらうことによって少しは軽くなるらしい。まさにそうだとAは思う。
ホテルに帰ってみれば、A宛に電話がかかってきたようだった。呼ばれて受話器を耳に当てると、その声はリョータだった。
ちゃんと向き合う決意はしたものの、いざとなると怖くなって言うべきはずの言葉が思い浮かばなくなってきた。
Aが口を開き、何かを言う前にリョータが先に言った。
「…さっきは、キツイこと言ってごめん。」
『…私も、ごめんね。』
「俺、ずっと見てほしかったんだ。母さんにも、Aにも、皆にも。ソータと比べてじゃなくてありのままの自分を」
リョータもそのことでずっと藻掻いて苦しんで抱えながら生きてきたんだと今更ながらにAは感じ取った。
兄弟なのだから、もしかしたらその悲しみはAより深いものだったのかも知れない。
私は、何を勝手に一人だけの悲しみと思って塞ぎ込んでたのだろうか。改めてリョータと話してそう思う。
「…明日、俺はソーちゃんが立つはずだったコートに立ってくる。」
「俺たちがどこと闘うのか知ってるよな」とリョータは聞いてきた。勿論、すでにその相手は知っている。あの有名な山王工業だ。
「だから…今度こそ見てろよ。俺を、”宮城リョータ”を、な。」
そういったリョータ。受話器の奥から少しだけ笑った声が聞こえてきた。
『…うん。頑張ってね。』
Aも自然と口からはそのような言葉を言っていた。
リョータは会話を終えると受話器をもとの場所に戻して公衆電話のボックスから外へ出た。空を見上げれば、そこには大きな月が自分を照らしていた。
今、自分のポケットの中に突っ込まれていた手が微かに震えていることに気がつく。
そんな自分に思わず苦笑してしまった。
この俺が切り込み隊長だってさ…笑えるだろ。とリョータは心の中で思う。
俺はいつも尻込みしてばかりだ。
震えた左腕の手首を掴みながらリョータは目を伏せた。
でも、もう一度Aと向き合う決意は証明してきた。次こそケリをつける。明日、ソーちゃんが立つはずだった舞台に俺は立つ。そこで証明してみせる。
俺だって、負けてられねぇんだよ。
不安になる気持ちもあるが、その度にリョータは自分の手のひらを見つめ返した。アヤ子が言ってくれた苦しくなったときにすることだ。
「ぜってー勝つ。」
リョータはそう呟いてまた駆け出していった。
夜明けは近い。
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三國(プロフ) - ぼくらいさん» コメントありがとうございます！！楽しんで貰えてるなら幸いです✨これからも更新頑張りますね💪 (2023年1月10日 6時) (
レス) id: db3bdcc075 (このIDを非表示/違反報告)
ぼくらい - いつも楽しく読ませてもらっています❤️🔥 (2023年1月9日 20時) (レス) id: 9239ef16aa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三國 | 作成日時：2022年12月31日 9時
