↑の続き ページ49
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「A。今の、本気で言ってるのか? 俺が無理してここに来たことなんて、一度もない」
彼が私の手に触れようとする。慌てて引っ込めようとしたが、私の手は呆気なく彼の大きな手の中に収まった。頬が熱を帯びていく。
「派手にぶっちゃけるが、俺はお前が好きだ。だから、お前に会いたくて通ってた」
迷いのない言葉に鼓動が高鳴る。でも、何を言えばいいのかわからなくて、視線を彷徨わせることしかできなかった。
「そもそも柱で派手な俺が、気にかけてるってだけで毎日会いに来るわけないだろ」
「でも、私地味ですし、手だって汚いし……」
「それはAが頑張った証拠だ。汚いなんて思わねェ。お前の手も、お前自身も綺麗だ」
彼のもう片方の手が、私の頭を優しく撫でる。思わず涙ぐみそうになり、唇を噛みしめた。今ここで泣いたら、彼に全てを曝け出してしまいそうで怖かったから。
「……私、宇髄様は愛華が好きなんだと思ってました」
「なんでその名前が出てくるんだ?」
「愛華は可愛いし、愛想もいいし……それに、一緒にいることが多いと聞いたので」
「あいつが勝手についてくるだけだ。それに、お前の方が何倍も可愛い」
釣り合わないと分かっているのに、彼の言葉が嬉しくて堪らない。瞬きをすれば、一筋の涙がこぼれ出る。すると、彼が慌てたように手を離した。
「わ、悪い。嫌だったか?」
「違うんです。ただ、嬉しくて」
「好き」も「綺麗」も「可愛い」も、あの子のための言葉だった。少なくとも、私にとっては。だから、好きな人がその言葉をくれただけで、こんなにも嬉しいのだ。
涙を拭って、目を合わせた。好きだと言ってくれたとき、彼がそうしてくれたように。
「私も、宇髄様のことが好きです」
声は震えていなかっただろうか。今、変な顔をしていないだろうか。不安になりながらも、目は逸らさなかった。
そのままじっと見つめていると、引き寄せられて、宇髄さんの胸に頰があたった。腕が背中に回り、強く抱きしめられる。私を包む大きな体は、温かかった。
「俺には三人の女房がいるが、それでも一緒にいてくれるか?」
「そんなこと、とっくに知っていますよ。奥さん達とも仲良くなりたいので、また紹介してくださいね」
「ああ。あと、自分が何番目だとか考えるなよ? 俺は四人とも一番だからな」
はい、と答えると、彼は私の額に口づけを落とす。そして、満足そうに白い歯を見せ、派手に笑った。
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あとがき→←推しだけが愛してくれたら。【鬼滅の刃 宇髄天元】____ムムチー様リクエスト
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シオン(プロフ) - ムムチーさん» そう言って頂けて嬉しいです!こちらこそ、素敵なリクエストをありがとうございました! (2020年4月9日 11時) (レス) id: 0f3fd09bd3 (このIDを非表示/違反報告)
ムムチー(プロフ) - ありがとうございます!!宇髄さんが派手派手にかっこよくてキュンキュンでした!!本当にありがとうございました!!!! (2020年4月8日 19時) (レス) id: c20b5adaac (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - ムムチーさん» リクエストしてくださった小説ができました!何ヶ月もお待たせしてしまい、申し訳ありませんでした! (2020年4月8日 18時) (レス) id: 0f3fd09bd3 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - リアビーバ-さん» こちらこそ、素敵なリクエストをありがとうございました!またの機会があれば是非よろしくお願いします! (2020年2月16日 11時) (レス) id: 0f3fd09bd3 (このIDを非表示/違反報告)
リアビーバ- - いえ、全然大丈夫ですよ!!!ありがとうございました!また機会があったらリクエストしますね♪ (2020年2月15日 15時) (レス) id: fa2d4be8dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シオン | 作成日時:2019年4月25日 23時