43話 発見 ページ46
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『では、霞柱様はこちらの部屋をお使いください。何かあったら声を掛けて下されば伺います』
障子越しに、それだけ言って部屋からていく彼女の足音を、どうにも落ち着けない部屋の中で、遠く耳を澄ませて聞いていた。
「…………」
トン、トン。
彼女は足音までもが均一で、決して乱れない。
まるで心地の良い子守唄でも聴いているかのようだった。
通された部屋の中はとても殺風景だ。あまりそういったことを気にしたりはしないけど、およそ生活に必要な物以外全てが存在しないのは流石にどうかと思う。
……でもこの部屋には なんというか、元々色々な物が飾ってあった空間から、それらを全て取り去ってしまったかのような、奇妙な虚無感があった。
昔誰かがこの部屋を使っていたのだろうか……
いや、それより
「(今…………この屋敷には二人だけ)」
窓を開けて、いつの間にか出ていた朧気な月を見上げてみる。美しいとは思わない。ただそこにあるだけ。記憶を失ってから今まで、何かを美しいという風に感じたことがない。
彼女のことも、別に見目が綺麗らしいから気がかりだとかじゃなくて、もっとこう……なんて言うんだろう、何がというか、どこがというか、
とにかく「おかしい」と感じることが多いんだ。
彼女の夕日に染まる横顔を見た時、なんだか胸がもどかしいような感じがしたし、今だってそうだ、僕は鬼殺隊の柱であって彼女の上官でもあるから、家に招かれることは別に変なことじゃないのに、さっきから心臓が変な感じに動いてる気がする。
思えば初めて彼女を目にした時も、今と似たようでどこか違うような気持ちになったのを覚えている。
……あと、そんな昔の記憶を僕が今でも維持できていることもおかしい。
ままならないのは、あの目に焼き付くような白色が印象に残って消えないせいだ。
「…………」
瞼の裏に彼女の姿を浮かべた。そう、初めて彼女に出会ったのは入隊してすぐの頃だったような気がする。
「あの時……どんな会話をしたんだっけ」
記憶の中の彼女の佇まいが、なんだか空に浮かんでいる手の届かない月と重なって見えて、思わず夜空から目を逸らした。
「……ん、」
やり場のない視線を畳に這わせていると、ふと、布団などを収納する押し入れの襖が少しだけ開いていることに気づいた。
「なんだろう……」
気がかりになって襖に手をかけてみれば、開いた瞬間、頭上に軽い違和感が走る。
「これ、紙…?」
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ほしいも(*^^*)(プロフ) - 設定めっちゃ自分の好みでした!(笑)更新少しずつでいいので頑張ってください〜!😁 (12月13日 16時) (レス) @page40 id: 88768a4726 (このIDを非表示/違反報告)
向汰(プロフ) - 空桜さん» そう言っていただけて嬉しいです!それに、私以外にも頑張っている方がいらっしゃるのだと思うと少し肩の力が抜ける気がします(´˘`*) 試験頑張ってください。応援しています (2019年9月23日 1時) (レス) id: 1112aaa288 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 待ってますね!私も就職試験あります。お互い頑張りましょう! (2019年9月23日 1時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
向汰(プロフ) - 何卒さん» ありがとうございます〜〜!気長にお待ちください(´˘`*) (2019年9月22日 21時) (レス) id: 1112aaa288 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - めっちゃ気になるところで終わってしまってウズウズしてます。笑 続き楽しみにしています! (2019年9月21日 1時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:向汰 | 作成日時:2019年8月25日 1時