20話 動かない ページ21
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翠色はどんどん景色に溶け込んでいって、真っ黒な闇と
気のせいか、こんな綺麗な色をどこかで見たことがあるような___________
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「______ねぇ、起きなよ」
誰かに至近距離で顔を覗き込まれている気配で覚醒した。当たりを見回すが車内に人はまばらだ。
気づけば息が少し乱れている、ああ、冷や汗も…
「……」
少しだけ屈みながら話している彼の長い髪が膝に垂れて、まるで包み込まれているかのような感覚に陥ったが、違和感を感じた私は素早く息を落ち着かせ、すぐ彼に事情を聞くべく向き直った。
『…………あの、』
「いない」のだ。
つい先刻まで2回目の乗車だ今度は鬼なんてごめんだなんだと騒ぎ立てていた3人組と、うるさそうに顔をしかめていた宇髄様が
『竈門少年達は何処へ……?』
もしかして乗り過ごしてしまったのだろうか、でもだとしたら霞柱様と共に車内にいることの説明がつかない。もしや鬼に連れ去られて……いや、近くに元柱を欺けるような強い鬼の気配はしない。
「……ああ、帰ったよ」
『何故…』
「…あの4人は任務を中断して帰って来るように鴉から伝令が来た。任務は僕達だけで実行する。そしてここは目的地に1番近い駅だから僕はもう降りる。」
必要事項だけ淡々と伝えて去っていく彼の背中を追うように駅のホームへと駆け出す。
夕焼け色に染まった駅を眺めていた彼の真似をしてみたけれど、なんの感傷も感動もなく、周りで他の人が見惚れているそれに私たちは特に関心を示せないまま目的地の花街へと向かうこととなった。
「わあ、綺麗だねえ!」
「そうだね……駅も夕日色に染まっていて、本当に素晴らしい景色だ」
親子連れが夕日を見てはしゃいでいる。
羨ましいな、綺麗なものを素直に綺麗だと感じられる心があって。感情を詰め込める器があって。
少しでいいから私の空っぽな心にもあんな感動を分けて欲しい。欠片だけでも構わないから分けて欲しいよ。…またそんなことを切に願ってしまうけれど、でも、彼も……
「…………」
……美しいであろう景色を見ても何も思わないのはいつものこと。だけど自分と全く同じ反応をする人間は初めて見た。なんだろう、同類を見つけた喜びとかではなくて、まるで鏡を見ているような_______
『…………?』
また、胸の奥が少しだけ疼いた。
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ほしいも(*^^*)(プロフ) - 設定めっちゃ自分の好みでした!(笑)更新少しずつでいいので頑張ってください〜!😁 (12月13日 16時) (レス) @page40 id: 88768a4726 (このIDを非表示/違反報告)
向汰(プロフ) - 空桜さん» そう言っていただけて嬉しいです!それに、私以外にも頑張っている方がいらっしゃるのだと思うと少し肩の力が抜ける気がします(´˘`*) 試験頑張ってください。応援しています (2019年9月23日 1時) (レス) id: 1112aaa288 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 待ってますね!私も就職試験あります。お互い頑張りましょう! (2019年9月23日 1時) (レス) id: e5333279ca (このIDを非表示/違反報告)
向汰(プロフ) - 何卒さん» ありがとうございます〜〜!気長にお待ちください(´˘`*) (2019年9月22日 21時) (レス) id: 1112aaa288 (このIDを非表示/違反報告)
何卒 - めっちゃ気になるところで終わってしまってウズウズしてます。笑 続き楽しみにしています! (2019年9月21日 1時) (レス) id: 58baba6999 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:向汰 | 作成日時:2019年8月25日 1時