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周りにジャニーズの人と恋人関係になった友達というのが一人もいないから、そういう事情がある自体知らなくて、いま、初めて知った。
たしかに12月下旬……それこそ大晦日には紅白歌合戦もあるし、ジャニーズだけでなく、歌手はイベント関係なく仕事がどんどん舞い込んでくる。
それが理由で恋人同士がギスギスして別れてしまう、という気持ちも分かるけれど、そんな事で別れたくないなと思ったのが本当の気持ちだ。
樹くんの頭を優しく撫でると「……なんか子供扱いされてるみたい。」と不貞腐れたような声で言われたので、その言葉に思わず笑ってしまう。
『……私の前では甘えていいんだよ?不安な事があったら溜め込むより、私に吐き出してくれた方が嬉しいし。……存分に甘やかしてあげるから。』
田中「……Aちゃん、」
『……ん?』
田中「……今、すっげー幸せな気持ちになった。」
『……不安は消えた?』
田中「……うん、……Aちゃんパワーすげぇわ。」
『ふふ、でしょ?』
田中「……Aちゃんと付き合えて良かった。」
『……私も。同じ気持ちだよ。』
愛おしそうな目で見られ、とろけるような甘い視線に射抜かれていると、細くて綺麗な指で頬を撫でられた後、マスク越しにキスをされる。
マスクを外した状態でキスされるものだと思っていたから、このコロナ禍という状況でしかしないような予想外のキスに吹き出してしまった。
リップ音も何も響かないので普段よりも恥ずかしくないキスができる事に気付き、誰もいないか確認した後に私も樹くんにマスク越しにキスをする。
樹くんは驚いたような顔をした後、その状況が面白くなってきたらしく、さっきの私と同じように吹き出して声を出して笑った。
傍から見たらこんなロマンチックな光景でのキスなのに、マスク越しというのがいい意味で邪魔をして……まぁ、私達らしいと言えば私達らしくて。
田中「……っ、あー、駄目だ、お腹すいた。なんか食い行こう?」
『……実は私もずっとお腹すいてた。』
田中「ははっ、言ってよ!」
『言えないよ、樹くん元気なかったもん。』
田中「へへ、ごめんごめん。……で?何食べたい?」
『うーん……外寒いし、暖かいカフェとか入りたいかな。』
田中「おっけー、……じゃあ行こっか?」
『うん、!』
……この人とお付き合いできて幸せだな。
手を繋いで歩いている途中、そんな月並みな事を思った。
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