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めっっちゃ裏です。
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『……にが、』
田中「俺はあまいんだけど。」
『え、うそ。』
田中「まじで。」
樹くんは樹くんで私が吸っているバニラ味の甘いたばこの味がしたらしく、たばこの味はキスの味まで変えてしまうのかと不思議に思った。
まぁ、口から身体に取り込む嗜好品だし、そりゃそうなんだけど。
唇を離してからずっと視線は外れていたけれど、ぱちっと同時に目が合って、それがなんだか演出みたいで小っ恥ずかしくてどちらともなく笑う。
田中「にがかった?」
『うん。』
田中「一回べってして?」
そう言われて、何も疑わずにべ、と舌を出した私が馬鹿だった。
そのまま樹くんは吸い込まれるように私の舌を吸い上げたと思ったら、自分の口内を樹くんの舌が駆け巡り、頭の中に感嘆符と疑問符が入り乱れる。
歯列をなぞられ、上顎を舌で刺激される度に身体が少し跳ねる。
軽いパニック状態になっている私は樹くんのされるがままになっていて、気付いたら樹くんの手は私の後頭部に優しく添えられていた。
空が紫色からオレンジ色に変わる空間には似合わない、真夜中にするような深いキスに溺れそうになっていると、名残惜しそうにそっと唇が離れた。
田中「っ、どお?にがいの消えた?」
『……、わかんない。』
田中「……かぁいいね、口の中ぐちゃぐちゃにされてぼーっとした顔。」
『……っ、恥ずかしいから言わないで、?』
田中「……やっぱ世界で一番かぁいいわ。」
私には甘すぎて胸焼けしてしまうような言葉をかけた後、樹くんの薄い唇は私の首元を這い、首筋から肩にかけての場所でちくっとした痛みが襲う。
純粋じゃない私は、キスマークを付けられた事を悟ってしまった。
まだ撮影はたくさん残っているし、どう隠そうかな、なんて考えていると、「俺だけの事考えてて」と言わんばかりに強引に唇を奪われる。
激しい刺激にはまだ慣れないけれど、されるがままだったさっきとは違い、樹くんと舌先を触れ合って苦さと甘さのバランスを丁度よくする。
……なんて、下手な言い訳。
しばらくすると互いを貪りあうようなキスの嵐がどちらともなく止んで、どこか物足りなさそうな顔をしてる樹くんは私の事をぎゅっと抱き締めた。
そして、耳元でこう言う。
田中「足んない、……ベッドいこ?」
もうどちらの物かも分からないたばこの火を踏み潰し、寝室に戻った。
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