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田中「え、ちょっと待って?」
『ん?』
田中「Aちゃん、いつも寝る時、俺にぎゅってされて寝てるよね?」
『あー……うん、そうだね。』
田中「その時にAちゃんがこいつを抱き締めてるとなると、俺とAちゃんの間にこいつがいる事になんのよ。」
『……ごめん、どこが問題なのか分かんない。』
田中「これじゃ二人と一匹でぎゅっになっちゃう。」
自分でも何が言いたいのか全く分かってないんだけど、とにかくAちゃんと向かいあわせでぎゅっとしてる時にこいつが間にいるのはなんかやだ。
考え過ぎかもしれないけど、恥ずかしがり屋であんまり普段正面から抱き締めさせてくれないAちゃんとの貴重な二人きりの空間がなくなる。
Aちゃんはそんな暴論を言っている俺を見て、『何言ってるんだろう』と言いたげな不思議そうな顔をした後、いたずらっぽく笑った。
その小悪魔みたいな笑顔にドキッとなってしまったけれど、すぐにそんな恋心に近しい胸のときめきは別の意味のドキドキに変わってしまう。
『……良くない?テディが間にいても。』
田中「え、なに、こいつテディって言うの?てか名前付けたの?」
『テディも私と一緒に寝たいよね。』
田中「なんか、ねぇ、え?やだよ?俺一人で寝るの?ソファーで?」
『ううん、私がソファー行くから樹くんベッドで寝て?』
田中「そういう、なん、え?やだぁ、意地悪しないでよ。」
『……テディと一緒に寝ちゃ駄目ならもうしょうがないよね、テディ?』
田中「一緒に寝ちゃ駄目とは言ってないじゃん!俺が言ってんのはね?こい……て、テディが俺たちの密着を阻んでるのが嫌なの!せめて俺がいる時くらいは枕元とかに置いて、俺とぎゅっとして寝て!」
26歳の男が何を言ってんだと思われているかもしれないけど、Aちゃんが寝てる時に無意識にぎゅっと俺の方に寄ってくれるのが好きで。
それがなくなってしまうのが嫌なのだ。
また大人気ない俺の話を聞いたAちゃんは楽しそうに笑いながら『分かったよ。』と言いながらテディベアを枕元に置いた後、俺の唇に軽いキスを落とす。
突然の事に戸惑う俺にAちゃんは桃色に染まった顔を隠すように、俺の胸に顔を埋めた。
『……私もやっぱり、樹くんとぎゅっとして寝たいな。』
……見たか、これが彼氏である俺とお前の差だ。テディベア。
……てか、俺はさっきから何と張り合っているんだろう。
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