怪演女優 Thirty Eight (ページ29)

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TEDDY ページ29

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とある昼下がり。

さっき配達員のお兄さんが爽やかな笑顔で渡してくれた可愛らしくラッピングされた箱を開けると、中からクリーム色が出てきた。

『わぁ……。』

中に入っていたのはふわっふわのテディベアだった。

身体はクリーム色で、目は空色。首には目の色と同じ色のリボンが巻かれていて、抱き抱えられるサイズ感と感触に思わずぎゅっと抱き締める。

嗅覚を刺激するいい香りに懐かしさを覚え、箱の中に入っているカードを見ると、これまた懐かしい手書きの字でメッセージが書かれていた。

小さい頃から数年に一度のペースでイギリスでぬいぐるみ職人をしているお父さんのお姉さん……叔母さんが手作りのぬいぐるみを届けてくれるのだ。

数年に一度のペースで、テディベアの贈り物は二十歳になってからは初めてで何歳になってもぬいぐるみにテンションが上がってしまう事に気付く。

まだまだ私も子供なんだな。

テーブルにテディベアを置いてイギリス英語で書かれたメッセージカードを読んでいると、ニコちゃんがテディベアをちょいちょいと触った。

「何これ？」と言わんばかりの表情に可愛いなと思ってしまうけど、このままだと目を離した隙に爪で引っ掻かれて見るも無惨な姿になるに違いない。

『これ触っちゃ駄目だからね。』と……おそらく言っても無駄な忠告をして、ニコちゃんは普段来ない寝室の枕元に置いておく。

それだけで寝室が一気に可愛くなったような気がして、眠る場所なのにテンションが上がっちゃって寝れないな……なんて馬鹿な事を考えてしまう。

リビングに戻ってテーブルに置きっぱなしだったスマートフォンを見ると、ぴこん、ぴこんと音を鳴らしてメッセージが来ていた。

「仕事おわったー」
「コンビニ寄ってから向かうね」

最近の一番の楽しみ。

絵文字も何もない、客観的に見ると冷たいように見えるけど、ちゃんと想いが込められてるメッセージがスマートフォンに映し出されるのが好き。

この前の一件もあり、過労が原因で痩せていくのをずっと心配してくれているから、最近会う時は多分色んな物をコンビニで調達してきてくれる。

そんな一目見ただけじゃ分からない優しさも好き。

……知らない間に随分とベタ惚れになったもんだ。

そんな事に気付いてしまって少しの小恥ずかしさを覚えながら「待ってるね」とメッセージを送った後、ソファーに寝転ぶと、お腹にニコちゃんが勢いよく乗ってきて思わず「うっ」と声が出てしまった。