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勝手に殺すな。という台詞はこういう時に使われるのか。
そんな事を思う時点で私の脳みそは「女優」で出来ているのだと実感する。
「贅沢な悩みなんだよ、文句言うな。」なんて言われかねないけど、女優って仕事は樹くんの言う通り命も奪いかねないから困ってしまう。
もちろん女優をやっているだけじゃ死にはしないんだけど、ストレスとか不眠とか、まぁ、その他諸々で精神的に参ってしまった人を何人も見てきた。
10代の時に見た女優像に私もなってしまっているのかな。
……そうだったら、嫌だなぁ。
『……わかった、冬ドラマのオファーは断る事にする。』
田中「……ほんと?」
『うん。大河ドラマとか映画はもうオファー受けちゃってるし、なんなら撮影も始まろうとしてる物もあるから断れないけど。それは許して?』
田中「……本当はそれも断ってほしいんだけど。」
『いや、それは無理だなぁ……。』
田中「……じゃあ我慢する。」
『うん、ありがとう。』
田中「……わがまま言う男きらいでしょ?」
『うーん……いや、別に嫌いじゃないよ?わがまま言ってくれるのは嬉しいし。でも我慢してくれてありがとうね。』
田中「……子供扱いやめれる?」
『無理だよ、だって樹くんは私の中ではおっきい赤ちゃんだもん。』
田中「せめて彼氏にしてくんねぇ……?」
まぁ、そんな事は別に思ってないんだけど。
本当は頼れる素敵な恋人だと思っているけど、なんかこの会話の流れでそんな事言うのは小っ恥ずかしくてついついこんな言葉が出てしまった。
素直になれない私に「素直になってよ」なんて言わず、そのままの状態でこんなにも好きになってくれたのが嬉しくて、樹くんの背中に手を回す。
すぅ、っと息を鼻から吸うと、樹くんの香りに包まれる。
香りの中に物語があるような……そんなドラマティックな香り。
オファーを断るなんて今までほとんどしなかったんだけど、いつも頼もしい樹くんから貰った嬉しいわがままだから。とお休みを貰う事にした。
……お休みの間、樹くんと少しでも一緒にいれるといいな。
田中「……今日は俺が痩せちゃったAちゃんにご飯振る舞う。」
『料理できないじゃん。』
田中「……なに食べたい?」
『……あったかいものが食べたいな。』
田中「うん、あったかいまま来ると思うよ。」
『……もしかしてUberEATSしようとしてる?』
田中「大正解。」
『……ご飯大盛りにしてくれる?』
田中「へへ、はぁーい。」
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