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『……何もないよ。』
田中「はい嘘ついた。Aちゃん嘘下手っぴだからすぐバレるよ。」
『……嘘じゃないし。』
田中「もー、観念して話してくんね?……それとも俺には話せない?」
『違う、そうじゃなくて……。』
田中「言わないならこのままその綺麗なお顔を胸筋と腕で潰すよ?」
『いててっ、ふふ、ねぇ、筋肉じゃなくて骨が当たって痛いんだけど。』
田中「じゃあ早く話して。話す?話すよね?ね?」
『わかった、わかったから。話すから。身体ちょっと離して?』
Aちゃんに言われるがまま身体を離すと、顔を上げて俺の顔をじっと見た後、俺の頬をちょん、と触って満足気にふふっと笑うAちゃん。
その表情に胸が温かくなって、思わず顔が緩んでしまう。
そう、この幸せそうな可愛らしい笑顔が見たかったんだ。
そのままAちゃんは顔を俺の胸に戻して、そのまま優しくぎゅ、と俺の事を抱きしめたかと思えば、それからずっと顔を上げる事はなくて。
Aちゃんの声は何も聞こえなくて、心配で「Aちゃん?」と話しかけると、Aちゃんは小さな声でぼそぼそと話し出した。
『……最近、インスタグラムのフォロワーが1000万人超えたでしょ?』
田中「うん、超えてたね。」
『……その中には日本の人も勿論いるけど、新しい順に並べ変えた時に多かったのが外国籍の人なの。英語の人もいれば韓国の人も、中国の人もいて。』
田中「うんうん。」
『……嬉しいの。凄く。……でもね、嬉しさが風船みたいに膨らんでいく内に、不安とプレッシャーが嬉しさのすぐ隣でどんどん膨らんでいくのを感じて。』
田中「……プレッシャー?」
『……フォロワーさんの中には私の演技とか、出てる作品を見て興味を持ってくださった方がたくさんいて。……私に興味を持ってくれてるたくさんの人の期待を裏切っちゃいけないんだなって思ったら……ずっと息が詰まりそうになっちゃってた。……心配かけたでしょ、ごめんね。』
Aちゃんは、何も悪くないのに俺に謝った。
話している最中にAちゃんは俺が着ているトップスをきゅ、と掴み、まるで大きすぎるプレッシャーに耐えているような雰囲気を感じて。
そんな小さな身体で普通の人じゃ考えられない期待と圧を背負っているAちゃんが凄く辛そうで、さっきみたいに強く強く抱き締める。
Aちゃんの中に蠢く黒いものが消えてなくなる事を考えながら。
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