【ゲーム実況者】浅き夢見じ酔いもせず【短編集】

百敷や　古き軒端の　しのぶにも　なほ余りある　昔なりけり／牛沢／幻奏音芽　リクエスト ページ48

「うっしー先輩って結構独占欲強そうだよね」




昼休み。サンドイッチを頬張りながら可愛い後輩のフジが言う。




「別に独占欲は強くないけどな。ただ物欲がすごいだけ」




百敷や 古き軒端の しのぶにも




そう、欲しいと思ったものはどう足掻いても欲しくなる。

例えそれが、なんであっても。




「ヒラくん、一緒に帰ろー！」

「A！いいよ、帰ろ」




フジやヒラと同学年のA。

赤がかった茶髪をポニーテールにした元気っ子。


この前俺が、あいつの落としたハンカチを拾ってあげた時。

Aは嫌そうな顔をして「あ、さーせん」って。




そういう俺を馬鹿にしてるような、そんな目が気に食わない。

だからこそ見てみたかった。


Aが俺を慕うような、そんな顔を。




「俺とも帰ろーよ」




とん、っとAの横に立ってみる。

ヒラがこちらを見て「うっしー先輩っ」と目を輝かせる。




「牛沢……先輩、なんですか？私ヒラと帰りたいんですけど」

「へえー？俺じゃダメなの？」

「うっしー先輩っ人の彼女奪わないでくださいっ」




彼女。

どく、と心臓が痛い。まるで誰かに握る潰されているみたいに。


これはなんの痛みだろう。


俺の物欲をくすぐる痛み？それとも、寂しさ？嫉妬？

いや、どうだっていい。




「奪わないよ。そっちからきたらしょうがないけど」

「絶対ないですから。私はヒラ一筋なんで」




弱みを握るとか、そういうのは好きじゃない。

ゆっくり、ゆっくり距離を縮めて。




「お、Aちゃんじゃん。一緒に昼飯食おーよ」

「ひとりで食べててください」




ちょっとずつ親密度を上げて。




「すげー雨。ね、A傘持ってない？」

「持ってますけど……は、入ります、か？」




そしたらきっと俺のことが気になって。




「う、牛沢、先輩。す、……っ」

「ん？」




目で追うようになって。

ヒラなんかどうでも良くなるんだろ。




「俺も、好きだよ」




授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。

俺はバッグ片手にAの教室に向かう。




「A」

「うっしー！」




Aは、俺の彼女になった。


Aと別れたヒラは理科室にこもるようになった。

惚れ薬を作ってるとかなんとか言ってたけど。




「うっしー、大好き！」

「俺もだよ、A」




なほ余りある 昔なりけり






￣￣
ベタ褒めしてくれる君が好き。

毎回リクエストの内容が最高なんじゃ。


リクエストありがとうございます！！！

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