【ゲーム実況者】浅き夢見じ酔いもせず【短編集】

世の中よ　道こそなけれ　思ひ入る　山の奥にも　鹿ぞ鳴くなる／フジ／塩　リクエスト ページ46

「えええええ！？湯毛ぽ、彼女できたん！？」




世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る




湯毛ぽは頬を少し赤く染めて「まあな」と呟いた。


フルコンさんと課長はふたり目を見合わせて嬉しそうに笑う。

課長なんかは特に、本当に嬉しそう。




「ほんまよかったわ……やべえ超嬉しい……」

「あー！！ヒラノないてるー！！」

「泣いてへんわ！！！」




もちろん俺も嬉しい。

だって、湯毛ぽの彼女を湯毛ぽに紹介したのは俺だもん。



ただ、ひとりだけ。

みかるだけが、悔しそうに唇を噛んでいた。



当たり前だ。

みかるはなんとしても、Aと湯毛ぽを付き合わせたかったみたいだから。




「なあなあ、湯毛ぽの彼女どんな子なん？」

「んー可愛い子やな。すっごい」

「うわあああ、惚気だああ！！課長も惚気で返してやれっ」

「よっしゃあ、うちのAなんかなあ！！」




みかるははあ、とため息をつくと静かに部屋を出て行った。

俺もその後を追う。



みかるはしばらく歩いて、喫煙所に入った。



タバコなんか、いつもは吸わないくせに。




「みかる」




みかるがタバコに火をつけたタイミングで喫煙所に入った。

みかるは目を見開いたけど、諦めたように煙を吐いた。




「……なに？」

「これで諦めてくれた？湯毛ぽとAのこと」

「まるでフジが仕組んだみたいな言い方だね」




と、流し目でこちらを見てくる。




「そうだよ。湯毛ぽの彼女を紹介したのは俺だもん」




みかるは俺から視線をそらして、また煙を吐いた。


しばらくして、俺にタバコを一本とライターを差し出す。

俺はそれを受け取る。でも、吸いはしなかった。




「湯毛ぽはその子のこと、すっごく大好きだよ」

「……へえ」

「Aのことなんか見えてないくらい熱中してる」




これでみかるも諦めてくれると思ってた。

しかし、みかるは「だから、何？」と冷め切った目で俺を見る。




「湯毛ぽがAのこと好きじゃないなんて、誰が言ったの？」

「は……？」

「フジの紹介した子を逃げ場にして、Aから目をそらしてるだけ」

「っどうしたんだよみかる！目ぇ覚ませよ！」




どうしてみかるはそこまで湯毛ぽに依存してるの？

どうして現実から目を背けてるの？


そんなに、悲しそうな顔をして。




「僕は湯毛ぽに幸せになってほしい。ただ、それだけ」




山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる








￣￣
塩さんお久しぶりです〜！！

このメイクさんシリーズも超久しぶりですねえ。


リクエストありがとうございます！！！！！

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