【ゲーム実況者】浅き夢見じ酔いもせず【短編集】

君がため　惜しからざりし　命さえ　長くもがなと　思ひけるかな／ガッチマン／猫助　リクエスト ページ22

「ここって……」




着いたのは、見覚えのある墓。お供物は大好きなヤクルト。

そう。ここは、私の墓。




「ここはね、パパのお友達のお墓なんだよ」

「お友達……」

「そう。今から話すことは、ママには内緒ね」




ガッチマンは線香を立てて、手を合わせる。




「Aっていうんだけどさ、昔パパが好きな人だったんだよね」




かあ、かあ、とカラスが鳴く。




「すごく可愛い人だったなあ。からかいがいがあってさ」

「からかいがい……」

「ふふ。でもね、死んじゃったんだ。交通事故で」




鮮明に覚えている。あのセミの声がうるさい夏の日のこと。

飛び出していった犬を守って、私は死んだ。




「神様の悪戯かなあ。俺は告白しようと思った日に死んじゃった」

「……え」




告白……ガッチマンが、私に？




「悲しかった。俺はあの日以降Aを思い出す度泣いてた」

「泣いてた、って」

「どこからこんなに涙が出てくるんだろうってくらいさ」




「そこで出会ったのがトラちんだけど」とガッチマンは呟く。




「まあそれは良いとして。お盆になると思い出しちゃうんだよ」




私の方を振り向いてガッチマンは優しく微笑む。




「そんな俺の思いがさ、Aのこと呼び出しちゃったのかもしれない」




そうでしょ？って。

ガッチマンはずっと気付いてたんだ。私のことに。




「A」




気付いたらガッチマンの腕の中にいた。

ガッチマンの汗の匂いがする。




「ずっと、ずっと好きだった。なんで、なんで死んじゃったんだよ」

「……ごめんね。私も好きだよ」

「A」

「良い奥さんとかわいい子供と最高の友人に囲まれててよかった」

「A！！！」

「もう、私がいなくても大丈夫だね」




ふわっと体が軽くなる。




「A、行かないで。俺はAが」




あのとき、死ななきゃよかったな。

そしたらガッチマンに告白されてたのに。




「……好きだよ。だから、忘れてね」




￣￣




くらっと倒れた茜を抱き抱える。



一週間前からだった。茜が普段と違っていたのは。

ヤクルトを異常に好んで、今まで好きだった納豆を嫌う。


まるで、Aのようで。




「忘れられるわけないだろ……」




ずっと、ずっと好きだから。




長くもがなと 思ひけるかな







￣￣
長編にしておいてなんだけど、いい感じにできなかった。

このお題最高ですね。


リクエストありがとうございます！！！

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