【ゲーム実況者】浅き夢見じ酔いもせず【短編集】

夕されば　門田の稲葉　おとづれて　蘆のまろ屋に　秋風ぞ吹く／フジ ページ20

「っ疲れたあ……」




家に着くなりソファに倒れ込む。

最近疲れが溜まってる気がする。寝ても疲れが取れないっていうか。




夕されば 門田の稲葉 おとづれて




「フジい、この前の実写編集したあ？」

「あっ、ごめんキヨ。まだ終わってなくて……」




そう言うとキヨはあからさまに舌打ちをする。

わざとだってわかってるけど疲れ切った俺には逆効果。


無理。キヨに舌打ちされた。機嫌損ねちゃった。

あとでキヨの好きなもの買っておかないと。編集もしなきゃ。




なんで、こんなことしてるんだろう。




「フジこれ新曲の楽譜なんだけど」

「うん、ありがとう！」

「ちょっと頑張ったからベース難しいかも〜」




えへへと笑うみかる。

いやこれ死ぬほど難しいんですけど！？




「レコーディング二週間後の予定だから、頑張ってね！」




もっと簡単にして欲しいけど、みかる頑張ったんだし。

俺も頑張ってこのベース練習しないとな……二週間後か。




誰のためにこんなことしてるんだろう。




「……ええっ！？電気代高すぎないっ！？」




一応家計簿的なのはつけてるんだけどさ、待って？

今月やばくない？？？



自炊するのめんどくさくて外食ばっかりしてたし。

新しいゲーム出たからたくさん買っちゃったし。



財布は重いんだけどなー？


俺は財布を開けて、逆さにしてみる。


出てきたのは、大量の小銭だった。




なんで、俺は生きてるんだろう。




「……疲れたなあ」




なにをしても幸福感が得られない。

なにをどう足掻いてもバッドエンドに落ち着いてしまう。


それなら、生きていたって意味が。




「ホントに限界近いの？」




細々と聞こえてくる、俺らの歌。

起き上がって、周りを見渡す。




「全力出し切ってるの？」




全力なんて、そんなもの出したって意味がない。

だって、俺はどう足掻いたって。




「まだまだキミはこんなもんじゃないよ」




ふと、テーブルに置いてあるウォークマンを見つけた。

つけっぱなしだったのか、充電がない。




「ここまで来たらあと少しだ」

「こんなチャンスは一度きりだよ」

「今は頑張りきりなよ」




編集も、ベースも、人生も。




「だけど大事な勝負は絶対ゆずらないぜ」




あーあ、めんどくさい。めんどくさいけど。




「しょうがないなあ。頑張るかー！！」




蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く








￣￣
ヒプマイのナゴヤのCD買った！！尊い！！

君がため　惜しからざりし　命さえ　長くもがなと　思ひけるかな／ガッチマン／猫助　リクエスト→←契りきな　かたみに袖を　しぼりつつ　末の松山　浪こさじとは／あろまほっと／あずさ　リクエスト

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す