12：彼 ページ35
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あっという間だ。全てが壊れる瞬間というのは。
「じゃあA、よろしく頼んだぞ」
「うん、行ってきます」
この頃から、父の商いによる収入も安定してきて、固定客もつき始めていた。私も自発的に仕事を手伝うようになり、今日はお客様の元へ配達に行こうとしていた。
お父さんに「行ってきます」と挨拶をして扉を開けると、羊の覆面を被った集団が家に押し掛けてきたのである。そしておびただしい数の人が家に入ってきて、武器を向けた。
父が何か恨みを買ったのか、それでも心当たりなど一切ないのだが。混沌としていた思考を整理しようとしているうちに、父が刺された。何度も。痛そうだ。
( 私がこの人たちを刺せば──。 )
父はまだ助かるかもしれない。そう咄嗟に包丁を持ったものの、何も出来なかった。震える手からこぼれ落ちるだけだった。
ただの直感ではあるが、数日前母が自死を選んだのも、この人たちが関係しているのかもしれない。
あんなに明るく溌剌とした母が精神的に追い詰められるなど、相当なことがあったのだろう。そんな相当なことが現在進行形で起きているというのに、私は何も出来ない。
ただ父から託された本があるだけ。
羊の覆面を外した人物を見てますます固まってしまった。動かない体を震わせていると、目が合って、その人の口角が上がる。だが次の瞬間、窓を割って家へと侵入してきた人物がいた。
西日に照らされたその姿は、輪郭は朧気であるが、それでも安心したことは覚えている。目が合って、その目を逸らすと、軽く持ち上げられるように横抱きされた。
「…間に合わなかったか」
彼は落胆したように呟くと、先程割った窓の枠から飛び出し、璃月港を駆けて行く。私は彼の首元に掴まった。
思い出される凄惨な光景が、確かに私を蝕んでいった。
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咲原(プロフ) - まるさん» 読んでくださり光栄です。。！ありがとうございます(˶' ᵕ ' ˶)！ (8月13日 12時) (
レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
まる - 最高でした！！お疲れ様です！ (8月13日 6時) (レス) @page48 id: 626fa9ab7b (このIDを非表示/違反報告)
咲原(プロフ) - あいうさん» ご覧頂きありがとうございます！元ゲームの雰囲気を壊さずに慎重に書いていましたのでそう言っていただき光栄です……！自分らしく執筆を頑張りますね！ (2023年2月21日 16時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
あいう - セノの小説あまり無かったのでめっちゃ嬉しいです！話しも自然ですごいです。めっちゃ好きです。自分のペースで更新頑張って下さい！応援してます！！ (2023年2月20日 1時) (レス) id: 914ffe60d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲原 | 作成日時：2023年1月19日 12時
