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( ──こんなの。 )
どうってことない。今までセノさんが私を守ってくださったこと、今回もそうしてくださることに比べたら。
「決行は三日後だ。各自、心しておくように」
セノさんの一言に高らかな返事が空にこだました。私も気を引き締めなければ、と握り拳を作っていると、セノさんが近付いてくる。
「この件が終わったら、俺たちはもう会わない方がいいだろう」
「………え?」
耳を疑った。
「どうしてでしょうか……?」
「お前をこれ以上関わらせたくない」
「…ですが、私にしかできないこともきっとあるはずです」
突然切り出される別れなど、受け入れる準備は出来ていない。
「お前が傷つくところは見たくない」
「………」
「今回の件でまた、どこかから恨みを買うだろう。そしたらその恨みの矛先がお前にまで向けられるかもしれない」
そのようなことは避けたい、と呟くセノさんは、彼は、少しだけ悲しそうな顔をしながら下を向いた。
いつも真っ直ぐ、迷いなどない目で顔を上げているセノさんが微かに弱気な部分を見せる。
「分かりました」
切実な願いであり、それを私が叶えられるのであれば頷くほかないのである。
「ごめんなさい」
「どうして謝るんだ?」
意外そうに目を見開いたセノさん。言葉を続ける。
「私、セノさんのこと何も知らなくて。セノさんがどのような立場にいるかも、立場上どんな人でどんな行動を取るのかも、何一つ分からなくて」
「………」
「マハマトラがこの国でどれだけ大きな存在で、そんなマハマトラの長が直接調査に行くような規模の大きなことの中にいて……どこか、自覚しきっていなかったんだと思います」
「…無理もないよ」
そうどこか困ったように微笑むと、私の頭を何度か優しく撫でた。想定など一切していなかったこの柔らかな感覚を知ってしまって、それでも別れが一秒一秒を刻んでいくのだ。
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咲原(プロフ) - まるさん» 読んでくださり光栄です。。!ありがとうございます(˶' ᵕ ' ˶)! (8月13日 12時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
まる - 最高でした!!お疲れ様です! (8月13日 6時) (レス) @page48 id: 626fa9ab7b (このIDを非表示/違反報告)
咲原(プロフ) - あいうさん» ご覧頂きありがとうございます!元ゲームの雰囲気を壊さずに慎重に書いていましたのでそう言っていただき光栄です……!自分らしく執筆を頑張りますね! (2023年2月21日 16時) (レス) id: 2d2082fe5f (このIDを非表示/違反報告)
あいう - セノの小説あまり無かったのでめっちゃ嬉しいです!話しも自然ですごいです。めっちゃ好きです。自分のペースで更新頑張って下さい!応援してます!! (2023年2月20日 1時) (レス) id: 914ffe60d8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:咲原 | 作成日時:2023年1月19日 12時