33話 ページ35
「大丈夫だA。左馬刻の行動は全て貴女を守りたい気持ちからくるもの。怯える必要はない」
「ありがとうございます…左馬刻さまが優しいのは理解しています、だから大丈夫です」
「目の前でそういう話すんなや…」
毒気を抜かれたように溜息を零す左馬刻さま。先程までのビリビリと肌を刺す殺気はもう感じない。
「不安にさせて悪かった」
そっと肩を抱き寄せられ、ゆるりと頭を撫でられる。
私を守ろうとしてくれたのだから怖くない、大丈夫ですよ。彼に対する信頼を伝える様に胸に凭れ掛かる。全くよろける事なく受け止めてくれる大きな身体に酷く安心した。
「それで、自分が被害者だと仰る理由は?」
左馬刻さまが落ち着いたのを見計らい、銃兎さんが口を開く。先程よりも声色は静かだが、男性を射貫く視線は依然として冷たい。
恐る恐る、といった調子で男性は口を開いた。
「…今日は昼頃仕事が終わったんだ。だから娘の好きなケーキでも買って早く帰ろうと思った。近道しようと路地裏を通ったんだ、そしたら一人の男が前に立ち塞がった。チンピラに絡まれたと思ってすぐ大通りに戻ろうとした…
でも、俺が引き返すより早く、男が俺に小さい箱みたいな物を向けてきたんだ。そこから音がして…多分、スピーカーみたいなものだと思う。その音を聞いてから記憶がないんだ…気付いたら、こんな事に…」
一つ一つ記憶を辿りながら話す様子は、やはり嘘をついている様には見えなかった。
もしかして、その接触してきた男というのが、継木環残なのだろうか。私を探し出す為に、この人は被害に合ってしまったのだろうか。本当だったら今頃、大切な家族と一緒に過ごしていたかもしれないのに、
「A」
「っ!!」
「余計な事考えんな」
無意識に、左馬刻さまのシャツを握りしめていたらしい。力の入った手を包み込むように大きな手が重なり、あやすようにやわやわと揉まれ、撫でられる。
「間違っても自分のせいとか思うんじゃねぇぞ。大丈夫だ、さっきも言ったろ。俺様がいるんだから何も怖くねぇってよ」
私の考えている事なんて、彼には全てお見通しの様だ。
「左馬刻だけじゃありませんがね。私も居ますので安心して下さい、A」
「うむ、Aの安全の為、小官も尽力しよう」
あぁ、なんて、なんて幸せな事だろう。こんなにも私を思ってくれる人がいる、守ってくれる人がいる。
身の程知らずと言われようとも、やっぱり私は、ここにいたい。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←32話
305人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヒプノシスマイク」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
和三盆糖(プロフ) - 香織さん» 閲覧、コメント誠にありがとうございます。ベタ甘な左馬刻さまが刺さったようで嬉しいです…!!マイペース更新にはなりますが、引き続きお楽しみいただけましたら幸いです。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆糖(プロフ) - さちゃんさん» コメントいただいたのに直ぐに気付くことができず、お返事出来ておらず申し訳ございません。かなり時間が経ってしまったのでもう届かないかもしれませんが…閲覧、コメント誠にありがとうございます。どうにか完結まで頑張りますので、また遊びにいらして下さい。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
香織(プロフ) - 久々の更新ありがとうございます!とても気になる展開と安定の左馬刻さまっぷりで最高です。続きを楽しみにしてます! (2021年6月5日 23時) (レス) id: be1cefb69b (このIDを非表示/違反報告)
さちゃん(プロフ) - とてもすきですT_T更新楽しみにしています>_< (2020年4月6日 1時) (レス) id: ffa613b322 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:和三盆糖 | 作成日時:2019年3月3日 19時