人魚 ページ42
月の光が反射する海はとても幻想的だ。
ぼんやりとそんなことを考えながら今直面している事態から目を背ける。
何で、こんなところにいるのか、とか。
今さっきまで自分の部屋でくつろいでいたのに、とか。
パシャリ。
水音が聞こえてゆっくりとそちらを振り返る。
が、特に何か見えるわけでもない。
魚でも跳ねたのだろうと気にすることもなく目を閉じた。
波の音に耳を澄ませる。
暫く触れることのなかった自然が、ささくれだった心身にじわりと広がっていくような温かさを感じる。
微かに人の声が聞こえた。
どこからだろう。
自分の他にも人間がいるのだろうか。
ゆったりとした足取りで声の元へ近付いていく。
段々とハッキリ聞こえてくるその声はとても綺麗で。
その声が紡ぐ歌は聴く者を虜にするような、不思議な魅力を持っている。
半ばその歌に操られるようにして声の主をこの目に入れる。
岩の上に腰掛けた女性。
月光に照らされた輝く金色の髪。
女性特有の曲線のある白い肌。
そして驚くべきはその脚。
それは人間のものとは到底離れていて。
振り向いた彼女はふわりと一瞬笑ったかと思えば、長い髪を靡かせて音もなく水中へと消えていった。
まるで、まだそこに彼女がいて歌っているかのように頭の中で彼女の声が柔らかく響く。
まるで、呪いにでもかかったようだ。
ふらりと足を踏み出して彼女の元へと落ちていった。
─人魚─END
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八重(プロフ) - カシオペアさん» ありがとうございます!!まさかこっちまで読んで頂けるとは……その上コメントまで……本当に感謝します(*/□\*)上手なんて、恐縮です……(でも嬉しい)頑張ります!ありがとうございます!本当に!!! (2017年7月3日 21時) (レス) id: e19e44ac0b (このIDを非表示/違反報告)
カシオペア - ヒロアカの方を読んだので、こちらものぞいてみましたが本当に文を書くのが上手なんですね。一つ一つが短くて読みやすいです。更新、頑張ってください! (2017年7月3日 20時) (レス) id: 972c361b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八重 | 作成日時:2017年4月24日 2時