ホラー (加筆ver) ページ35
息を潜めて物陰に潜む。
バクバクと煩い心臓を服の上からぎゅっと押さえた。
月明かりが暗い室内に差し込んで、幻想的なイメージを与えた。
草木も眠る丑三つ時。
しんと静まり返った部屋にコツリと不似合いな程に響く靴音。
規則的に響くそれが不意に止まった。
聞き慣れたはずの扉の開閉音が嫌に耳についた。
キツく目を瞑って、早く解放されたいと願う。
***
暗闇が視界を覆い尽くして、先程の光景が映し出された。
ぐちゃりと飛び散る赤い鮮血。
ビクビクと痙攣して、やがて静かに息絶えた両親。
吐き気を催すような、嗅ぎ慣れない臭い。
ゆっくりと振り返る二対の目。
恐怖で震え上がる自身の体。
声が、出ない。
逃げろ、逃げろ、逃げろ。
頭の中で警告音が鳴り響く。
足がすくんで、動くことが出来ない。
"ソイツ"の腕が伸びてきて、死を覚悟したその時。
耳を貫くような甲高い声。
"ソイツ"は伸ばしていた腕を止めて、声の出所、まだ一歳にも満たない妹の方へ足を向けた。
じっと妹を見下ろして、見せ付けるようにして包丁を持ち上げた。
月光が反射してキラリと光る。
その輝きが、不謹慎にも綺麗だと思った。
刹那、勢いよく降り下ろされるそれ。
流れ続ける血、止んだ泣き声、暗闇の中で青白く浮き上がる"ソイツ"の横顔。
ゾクリ。
背筋に冷たいものが伝って、かつてないほどに素早く体を翻した。
***
玄関に飛び付く。
ガチャリと虚しい音を響かせるだけのそれに、血の気が引く。
コツリ。
靴音が聞こえた。
咄嗟に近くの部屋に逃げ込む。
タンスの中に身を隠して、荒くなった呼吸を整える。
ゆっくりと、けれども確実に近付いてくる靴音に鼓動が早くなる。
そのままどこかへ行ってくれと願う。
私はまだ、生きていたい。
ギイっと開いた扉の向こうにはゾッとする程に優しい笑みを浮かべた兄が。
─ホラー─END
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八重(プロフ) - カシオペアさん» ありがとうございます!!まさかこっちまで読んで頂けるとは……その上コメントまで……本当に感謝します(*/□\*)上手なんて、恐縮です……(でも嬉しい)頑張ります!ありがとうございます!本当に!!! (2017年7月3日 21時) (レス) id: e19e44ac0b (このIDを非表示/違反報告)
カシオペア - ヒロアカの方を読んだので、こちらものぞいてみましたが本当に文を書くのが上手なんですね。一つ一つが短くて読みやすいです。更新、頑張ってください! (2017年7月3日 20時) (レス) id: 972c361b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八重 | 作成日時:2017年4月24日 2時