あまのじゃく�� ページ18
前から女が歩いてきた。
女はこっちに気付くと足早に近付いて目の前で立ち止まる。
「ねえ、天邪鬼」
「やァ、轆轤首。また一段と綺麗になったね」
笑って言うと、今にも泣き出しそうにその美しい顔を歪める。
「ねえ、天邪鬼」
「なんだい、轆轤首」
どうかしたかい、と言って笑うと更にその顔を歪める。
「あなたは私が好きだと言ったわね」
「あァ、言ったね」
それがどうしたんだい、と言うと本当に？と返ってきた。
その事に少なからず驚いて少し目を見張る。
「本当に私が好きなの、天邪鬼」
「あァ、本当さ。本当に君が好きだよ、轆轤首」
――君は世界一美しいからね。
「ならどうして私と会ってくれないの、天邪鬼。
この前も、その前も、会ってくれると言ったじゃない」
「あァ、ごめんね轆轤首。ずっと忙しかったんだ」
本当は会いたかったんだと言うと、また顔を歪める。
歪めて歪めて、更にはもう戻らないんじゃないかと言うほどにその顔は原型を留めていない。
「ごめんなさい、天邪鬼。もう信じられないわ」
――それでも君は、美しいね、轆轤首。
ポロリと轆轤首の頬を伝う涙を拭ってまた笑う。
「君が謝ることないんだよ、轆轤首。謝るのはこっちさ。ごめんね」
そっと離れていくその背を見て、手を伸ばす。
届かないと知っていながらも伸ばさずにはいられなかった。
「さようなら、天邪鬼」
「さようなら、轆轤首」
最後に振り向いた轆轤首に向けて一番の笑顔を送る。
――あァ、終わりか。
くるりと轆轤首に背を向けて、元来た道を歩き出す。
「さようなら、轆轤首」
どうして自分は天邪鬼に生まれてきたのだろう。
きっと天邪鬼でなかったらこんな辛い思いはしなくて済んだのに。
――あァ、胸が。
痛いよ。
─あまのじゃく─END
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八重(プロフ) - カシオペアさん» ありがとうございます！！まさかこっちまで読んで頂けるとは……その上コメントまで……本当に感謝します(*/□＼*)上手なんて、恐縮です……(でも嬉しい)頑張ります！ありがとうございます！本当に！！！ (2017年7月3日 21時) (
レス) id: e19e44ac0b (このIDを非表示/違反報告)
カシオペア - ヒロアカの方を読んだので、こちらものぞいてみましたが本当に文を書くのが上手なんですね。一つ一つが短くて読みやすいです。更新、頑張ってください！ (2017年7月3日 20時) (レス) id: 972c361b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：八重 | 作成日時：2017年4月24日 2時
