浴衣 ページ15
人混みから離れて古びた神社に入る。人の気配はない。
社前の階段に二人並んで腰を下ろした。
「だから祭りなんて嫌だって言ったんだ」
人に酔った、と気持ち悪そうにしている彼女の背を擦りながら文句を垂れる。
「行きたかったんだもん」
落ち着いたのか、手を後ろについて足をぶらぶらと揺らす。
「それにしても暑いねえ」
間延びした調子で言う彼女に呆れてため息を吐く。
パタパタと手で扇ぐ彼女の顔は赤みを帯びていてその血色の良い頬に汗が伝う。
人混みを通ってきたからか、彼女の浴衣が少し乱れていてその胸元がチラリと覗く。
「浴衣、ちゃんと着た方が良いよ」
軽く注意すると照れたように笑ったが直す気配はない。
「暑いからもうしばらくこのままで良いや」
その言葉を言い終える前に遠くの方で花火があがった。
「始まっちゃったね。残念」
そうは言うが、そこまで残念そうには見えない。
「綺麗だね」
ちょっと遠いけど、と言う彼女の瞳に色とりどりの光が移る。
「綺麗だね」
彼女から目を外して花火を見上げる。
遠いはずの花火はとても大きくて間近であがっているように見えた。
気持ちの良い夏の風が木々を揺らし、頬を撫でた。
─浴衣─END
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八重(プロフ) - カシオペアさん» ありがとうございます!!まさかこっちまで読んで頂けるとは……その上コメントまで……本当に感謝します(*/□\*)上手なんて、恐縮です……(でも嬉しい)頑張ります!ありがとうございます!本当に!!! (2017年7月3日 21時) (レス) id: e19e44ac0b (このIDを非表示/違反報告)
カシオペア - ヒロアカの方を読んだので、こちらものぞいてみましたが本当に文を書くのが上手なんですね。一つ一つが短くて読みやすいです。更新、頑張ってください! (2017年7月3日 20時) (レス) id: 972c361b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:八重 | 作成日時:2017年4月24日 2時