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カチャリと扉が開く音に顔を上げると、相変わらずのスーツ姿でAが現れた
「随分早いな」
「やぁリゾット。君は……寝てないみたいだね」
呆れたようにそう言ったAは、リゾットの手から書類を抜き取った
軽く目を通してから、「君も大変だな」とため息を吐いた
「食いに行くのか?」
「散歩がてらにね、君も来る?息抜きになるかも」
「……そうだな」
丁度数字を眺めるのも飽きてきた所に願ってもない誘い。
書類を纏めて立ち上がると、ダイニングの椅子に掛けっぱなしだったコートが差し出された
「良かった。実は私、店を選ぶセンスが壊滅的でね。是非とも美味しい店を紹介して欲しい」
まさか、彼女が暗殺者だなんて夢にも思わないであろう朗らかな笑みに、リゾットもほんの少しだけ笑みを浮かべた
肌を刺すような寒さのに身を縮めながら、澄んだ空気の中を実に穏やかな気持ちで、時々Aの言葉に相槌を返しながら、イタリアの町を歩いた
「そう言えば君は、私が目を覚ましたとき、何だか嬉しそうだったよね?」
どうして?と首をかしげるAに、リゾットはコートのポケットに手を突っ込んでから答えた
「……知り合いに、話を聞いていた」
「話?」
「ああ、今は病床に伏しているが。……昔、ある暗殺者に命を救われたと」
「それが、私だと?」
「ああ、そうだ」
足を止めたリゾットとAがたどり着いたのは、ひっそりとした小さなカフェだった
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2018年7月1日 15時