検索窓
今日:28 hit、昨日:54 hit、合計:668,603 hit

・〜柊side〜 ページ44






俺の隣に座った渡瀬は、煌々と光るモニターを眺めている



その横顔は凛としているが

そこはかとなく儚さみたいなのが滲み出ていた



出会った当初から変わらないのに何故か不安になる


そして、こいつの眺めるという動作は何を考えているのか推測出来ない

考えているのかもしれないし、考えていないのかもしれない




こいつは感情の起伏が少なく、いつも穏やかに微笑んでいる様に見える


年相応の表情をあまり見せてくれない





『…先生も、死んじゃうんですよね』



「ッ!」





ほら、この時もそうだ


顔はモニターに向いていて、どういう意図でそう言ったのかを横顔から判断するのは極めて難しいものだった


そして俺の頭の中を満たすのは疑問だけ


何故、そんなことを知っている…




そんなことが頭を占めて暫く口に出来ないでいると、渡瀬がこちらを向いて俺の顔を一瞥した


何か言いたかったのか口を開いたが、それを堪えるように一瞬だけ口を噤む





『え、先生って不死身だったりします?』



「…いいや、普通の人間だよ。

寿命付きの」



『ですよねぇ』





そう笑うこいつは、やっぱり年相応に見えなくて


何かを悟る大人のような顔をして笑う


無駄に大人びてるんだ



顔色を伺って素っ頓狂なことを言うのも

笑って誤魔化すのも


1年の頃から変わらなくて

踏み込もうと考えては見るが、その先が見えなくなる


渡瀬はそういうやつだった




でも、そんなこいつが酷く魅力的だ



極たまに見せる子供らしい笑顔も

こういう時に見れる綺麗な横顔も

絵を描く時の表情も


胸の奥をギュッと締め付ける



この感情を伝えたら、こいつはどんな顔するんだろうか

今更感はあるけど…



あぁ、でもその前に確認したいことがある





「渡瀬のこと知りたいんだよなぁ…」



『……今更じゃ、ないですか』



「まぁ、そーなんだけど」





体をほんの少しだけ強張らせて、言葉を探ったのが分かった


確かに生徒の家庭事情や生い立ちは調べ尽くしたが、こいつだけは何か違う…


と俺は睨んでいる



その横顔を眺めていると、突然立ち上がってふら〜っと準備室の中を歩き始めた。





「何探してるんだ?」



『…薬、です。

あ、あった』





そう言って手にしたのは昨日も飲んでいたやつだった

本人はビタミン剤と誤魔化したが、睡眠薬ってのが正しいんだろう


それを口の中に含み、噛み始めた





「おいッ、水飲めバカ」








・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (197 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
917人がお気に入り
設定タグ:3年A組 , 柊一颯 , 菅田将暉
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - ごめんなさい、不謹慎だけど主人公冷静にツッコミしすぎて笑ってしまった笑 (2022年4月12日 0時) (レス) @page32 id: 4806b1b4dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - 苗字で呼ばれるなら変換できるようにしてほしい!自分渡瀬じゃないんで! (2019年3月31日 4時) (レス) id: b95582035d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:もちもち | 作成日時:2019年3月17日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。