No.61*チョコレート ページ31
「っていうのは、嘘なのだけど」
そう言うと刃物を投げ捨て、サキを床に優しく寝かせた
ワカと言われた男は、わなわなと震え今にも暴れ出しそうになっていた
「貴方は何がしたいのですか」
「私も君と同じだ。大切な人や大切な仲間を守りたいだけだ」
太宰がワカに歩み寄って行き、ワカは少しずつ後退して行く。俺は、先程通りにワカの後ろへと回り込んだ
「それ以上近付くと風で吹き飛ばしますよ」
「やれるものならやってみ給えよ」
風が太宰に向け放たれようとした。だが、それは阻止された
『重力操作』
勿論、死なねェ程度に。少し苦しいかも知れねェがそれは我慢してもらうしかない
「頭の良い君なら分かってくれると信じているのだけど」
「は…やく用件を…い…って下さい」
重力のせいなのか少し途切れ途切れに喋る此奴に少し重力をかけるのを抑える
「悪い事をするのでは無く、佳い人間になれ」
「今更僕に出来る筈が有りません」
「やる前から出来ないと決めつけるのかい?葵や華恋が変われていたのを目の当たりにして何とも思わなかったのかい?」
俺は2人をじっと見据え、唇を噛み体を震わすワカの返事を待った
「あの二人は特別なんです。環境に恵まれて居たからです。僕達はもう手遅れです」
「手前はまだ分かんねェのか?あの二人が手を差し伸べてくれたじゃねェか。誰かが救ってくれる事は恵まれてる事だろ」
「ぼ…く達を救う?」
ワカの瞳の奥が揺らぎ、その目は続きを待ち望んでおり、太宰はその瞳を見て優しく微笑んだ
「葵も華恋も君達と向き合って救いたいと言っていたよ。2人を信じてみたらどうだい?」
そして太宰はゆっくり手を伸ばしワカの腕を掴む。彼奴の異能は無効化だ。だから、俺の異能も消える訳で
ワカは少し揺らめいた後、立ち上がりフラフラとした足取りでサキの元へと向かう。そして、眠っているサキの髪を掬い撫でた後、静かに言葉を放った
「信じてみることにします」
「無事に終わったみてェだな」
「中也のせいで疲れ果てたのだけど」
「ざまァねェな」
俺はそう言い、2人を探す為歩き出した時だった
「待ちたまえ、中也」
「何だよ」
「その先には行ってはならない」
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作者名:龍神邪炎&チョコレート x他1人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2017年12月19日 14時