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そのあと。
美羽は『Trickstar』のいる防音練習室に戻った。
彼女がいなくとも、自分たちで曲順、ダンスの振り付けなどを決定していた。
ガーデンテラスから戻ってきた美羽からの差し入れを食べ、小腹をじゅうぶん満たすことができたのだろう。
みんな、元気よく行動している。
真が端末のそばに移動し、手慣れた感じで操作した。
機械を弄(いじ)っているときが、いちばん活き活きしている。
美羽は邪魔にならないように、食事の後片付けを終わらし、部屋の隅っこへ。
同時に、真が軽快に端末をタップする。
「んじゃあ、音楽を流しちゃうよ〜? 音量は、このぐらいでいい?」
「ここは防音室だ、もっとボリュームをあげても構わんぞ。誰に、迷惑がかかるわけでもない。
この空間は、俺たち『Trickstar』の領土だ」
流れ始めたメロディを受けて、北斗があらためて柔軟体操をする。
「まだ未定の部分のダンスなどの形式も、フリーでいい。のびのびと踊ろう、できれば笑顔でな」
言葉どおり柔らかく微笑んで、北斗は立ち上がると、魅力的なステップを踏み始める。
「俺は最近、ようやく気づいたのだが。どうも笑顔であるほうが、歌も踊りも輝きを増すらしい」
「あはは。氷鷹(ひだか)くんはちょっとだけ、考えかたや表情が柔らかくなってるよね〜♪」
「双子との特訓の成果だろう、と思いたい。自分では、よくわからないが」
もろもろの作業を終えて、真が北斗の横に並ぶ。
完璧な動きをする北斗に比べて、真はぎこちないけれど____一生懸命さが伝わってくる。
全員が完璧で万能でなくてもいい。
持ち味を発揮して、ふたりはダンスに没頭する。
「遊木も、以前よりずっとパワフルになっているな。踊るときぐらいは眼鏡(めがね)を外すか、スポーツ用のものにすべきだとは思うが」
「あぁ、言われてみればそうだね。ほんと視野も広くなったよね〜、氷鷹くん。お小言が増えて、ちょっと面倒だけど♪」
「ふん。お小言が嫌なら、俺が文句をつけられないほど立派になってみせろ」
叱っているわけてはなくて、軽口を交わしている。
これも、以前の北斗からは考えられないことだ____軽妙で、惚(ほ)れ惚(ぼ)れする。
「俺も、負けてられないな。とくに、特訓をサボっていた明星や衣更には」
「え〜、俺はサボっていたわけじゃないんだけどな。まぁ、いいけど」
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時