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「たとえ負けても、諦(あきら)めはつく。ううん、何もかもやり尽くしたって達成感があるからさ。
あとは実際に____俺たちの努力の成果を、舞台で披露するだけだ」
真緒が、仲間たちのひとりひとりに目配せをする。
複雑な立場の彼だけれど、もう踏ん切りがついているようだった。
「がんばろうな、みんな」
「うん。僕はまだちょっと、ブルってるけど......。今さら、泣き言を漏らしても仕方ないよね。
僕たちは生徒会と戦う、そして勝利する。
ずっとそのために、この日のために血と汗と涙を流してきたんだ。
絶対に、それを無駄にはしないよ」
真が、いつもの弱気な態度か嘘みたいに誇り高く頷いた。
泉に壁際に追いつめられ、項垂れていた____そんな情けない自分と決別するみたいに。
彼もまた、悪意を降りきって、【輝かしい自分】へと開花したのだ。
「がんばろう。僕たちが、この夢ノ咲学院を変えるんだ」
「あんまり気負いすぎないでね〜、今から緊張しても疲れるだけだよ」
ひとりだけなにも変わっていない気がする、平然とした態度でスバルが茶化(ちゃか)すみたいに言った。
けれど人間味がないほどに、明るく輝くだけの星のようだった彼の内側には____
無限の熱と、推進力がみなぎっている。
どんな分厚い雲も吹き飛ばして、地上に恵(めぐ)みをもたらす太陽みたいな笑顔だ。
「リラックスするために、ホッケ〜が習得したという漫才を見せてもらおう☆ はいホッケ〜、どうぞ! わくわくっ♪」
調子のいいことを言って、場を和(なご)ませている。
強いてそうしているというよりも、こういう子なのだろう。
そんな彼の無邪気な明るさは、チームに必要なものだ。
思い詰めても、仕方がない。
やるだけのことは、やったから。
もともと、無茶な話なのだ。
当たって砕(くだ)けて、それでも悔(く)いのない笑い転げられるのが、スバルの強さだ。
『Trickstar』の、一番星の。
創たち____『Ra*bits』の仇討(かたきう)ちだからと、憎悪(ぞうお)に凝(こ)り固まることもない。
もちろん、忘れてはいないだろう。
スバルは、自分で言っていたほど欠けてなどいないから。
けれど怒りを、復讐心(ふくしゅうしん)すらも明るい輝きに変えて、彼は笑っている。
そんな彼だからこそ、創も憧れたのだろう。
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時