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ついに始まるのだ、彼らの革命が。
絶対に外せない、大一番が。
この夢ノ咲学院を根底から覆(くつがえ)すための、大きな契機(けいき)が。
歴史の転換点。
もしかしたら努力もむなしく____みじめに敗れ去り、屍(しかばね)を晒(さら)すだけの結果になるかもしれないけれど。
誰ひとりとして、負けるつもりはない。
万が一にもありえないはずだった勝利を、未来をつかむために、両目を爛々(らんらん)と輝かせて立っている。
嵐の前の静けさのなか____北斗の声が、響いている。
「みんな、不安もあるだろう。俺たちの運命の分かれ道が、間近に迫っているのだから。
だが今晩だけは、自宅に戻ってゆっくり休んでくれ」
今日もたっぷり特訓を終えて、最終下校時間も超過している。
窓の外は暗闇である____星々が、瞬(またた)いている。
それは彼らの未来を照らす、希望の輝きに思えた。
崇高(すうこう)な儀式のように、彼らは決戦前夜のミーティングをしている。
すでに万事は語り尽くされ、明日、為(な)すべきことは詳細に決まっている。
それをひとつひとつ再確認し、覚悟を決めた。
あとはもう昂(たか)ぶる気持ちを抑(おさ)えて、明日に備えて寝るだけである。
大丈夫。
『Trickstar』のみんなならば。
強(し)いられた過酷な現状を、生徒会の支配を覆し、この夢ノ咲学院に革命を起こせる。
そしてきっと、高らかな凱歌(がいか)を響かせるのだ。
この全世界に、大宇宙に......。
それはきっと、夢などではない。
夢想を現実にするために、彼らは全力を尽くしたのだ。
人事を尽くして、天命を待つ。
運命の神さまが、微笑んでくれることを期待する。
「アイドルは、身体が資本だ。とくに衣更と遊木、それに朝霧先輩は無理を重ねたようだからな......。
当日、本番中にぶっ倒れられても困る。
縄でくくってでも家のベッドで寝てもらうから、そのつもりでいてほしい」
「あぁ、わかってるよ」
くどくどとお小言(こごと)を垂れる北斗に、むしろ安心感を覚えたのだろう。
真緒が自然体で応える。
「打てるだけの手は打った、やれるかぎりの練習はした。これで通じなければそれはもう、
そういう運命だったってことだ」
いつもの、『Trickstar』だ。
みんな必要以上に気負いすぎずに、決選に備えている。
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時