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再度、足を進めようとした泉をとめる。
「......何」
「......変わったわね、『Knights』も」
静かに、口に出したことば。
部屋のなかにいる、真と真緒には聞こえていない音量で。
「はぁ?」
彼の眼光が鋭く、美羽を捕らえる。
「『knights』が変わったから、私も変わった。......ただ、それだけよ」
「『knights』が変わった? 寝言は寝てから言いなよねぇ。
『Knights』は、何ひとつ変わってない」
「なら、私も何ひとつ変わってないわ。......【あのひと】も、何も変わってなんかいない」
真っ直ぐに、泉を見つめる。
ふたりの視線が、かち合った。
「あんたと【あいつ】は変わった。それは、誰がみてもわかること。
でも、『Knights』は違う。何も、変わってない」
泉は言う。
「変わったわ」
美羽も、言い返す。
「『Knights』も、あなたも、私も......【あのひと】も」
ずっと同じでなんて、いられるはずがないもの____
「何が言いたいの」
泉が問(と)う。
「......まだ、夢見てる?」
泉の瞳をじっと見つめたまま、美羽は逆に問うてきた。
自分の質問を無視した彼女に、泉は苛立(いらだ)ちはしたものの、彼女の質問に答える。
「何言ってんの、そんなわけないじゃん」
美羽の瞳から、視線を背(そむ)ける泉。
「俺の夢はもう、とっくの昔に覚めてるよ」
悲しげに、憎らしげに、吐き捨てる。
「もう一度、見たくないの?」
美羽は、目を伏せる彼に聞く。
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「【あいつ】はもう壊れた。たとえ、【あいつ】が帰ってきたとしても......
俺の夢は、もう二度と始まらない」
「【あのひと】は壊れてなんかない。夢だって、まだわからないわ」
彼女は言う。
「わかりきってることだよ、昔から。
......【あいつ】は、その程度の奴だった。ただ、それだけなんだ」
何もかも諦めたような、苦痛な表情。
「その程度の奴だった......? 本当にでそう思っているの?」
泉は、肯定するように、なにも言わなかった。
「本当にそう思っているなら、ちゃんと言いなさいよ。
私の目を見て、ちゃんと言ってよ......____【泉】っ」
大きな声を出してはいない。
けれども、凛とした彼女の声は廊下に木霊(こだま)す。
先程までの会話が聞こえていない真と真緒は、何事かとその顔に焦りをみせる。
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時