検索窓
今日:8 hit、昨日:19 hit、合計:7,926 hit

phrase113 ページ15





「僕は、本気です」



 あくまで不愉快そうに眉をひそめる泉に、真は必死に言葉を尽くした。



「ううん。この場所でしか、自分が生きてるって実感できない。『Trickstar』は、空っぽだった僕の人生で初めて見つけた宝物なんです」


____「絶対に、失いたくない」____



 目元に涙まで浮かべて、真は悲痛に訴(うった)えたのだ。



「僕はもう、心を殺しながら生きていくのは嫌なんです」



















「それが、彼の本心よ。____【泉くん】」



 また笑みを消して、野性動物みたいな無表情になった泉。


 しかし、彼が口を開く前に____いつ戻ってきていたのか____美羽が、入り口付近に立っていた。



「......」



 泉はギロリと美羽に視線をやる。


 しばらくのあいだ、ふたりの無言の睨み合いが続いた。



「ちっ......。部外者は黙っててくれないかなぁ?」



 泉の舌打ちにより、沈黙は破られた。



「てか、なんなの、あんた? 勝手にいなくなったと思ったら、こんな奴らと一緒にいるわけ?」



 泉の問いかけに、言葉に、彼女は口を開こうとしない。


 そんな態度にむかついたのか、泉は再度舌打ちをした。



「まぁ、もうあんたとは関係ないし、どこにいようと勝手だけど。でも、俺は今ゆうくんとお話ししてるの。

 邪魔しないでくれるぅ?」


「......邪魔するつもりはないわ。けど、黙っているつもりもない」



 ようやく、彼女は言葉を発した。


 泉はピクリと眉を動かす。



「あなたに、真くんの人生を決める権利なんてないわ。真くんは『きれいなお人形』でも『あなたのもの』でもない。

 ____『Trickstar』の、遊木真くんよ」


「はぁ? 意味わかんないんだけど。こんな弱い『ユニット』、ゆうくんにはもったいないし、

 そもそもゆうくんにアイドルなんて向いてないの。

 俺はただ単に、現実社会を教えてるだけ」



 険悪な空気がふたりの間に流れる。


 泉は、もう美羽の存在など最初からなかったかのように、真に冷然と、吐き捨てる。



「いいけどねぇ、べつに。どうせ何もできずに失敗して、挫折(ざせつ)して、俺のところに戻ってくる。

 遅いか早いかのちがいなのに____無駄に回り道しても仕方ないでしょう、って忠告してあげてるのにさぁ?」



 そして、嘲笑(ちょうしょう)した。



「寄り道も、いいけど。どうせ自分の才能からは、運命からは逃げられないのにねぇ?」



phrase114→←phrase112



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.7/10 (19 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
34人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。