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「僕は、本気です」
あくまで不愉快そうに眉をひそめる泉に、真は必死に言葉を尽くした。
「ううん。この場所でしか、自分が生きてるって実感できない。『Trickstar』は、空っぽだった僕の人生で初めて見つけた宝物なんです」
____「絶対に、失いたくない」____
目元に涙まで浮かべて、真は悲痛に訴(うった)えたのだ。
「僕はもう、心を殺しながら生きていくのは嫌なんです」
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「それが、彼の本心よ。____【泉くん】」
また笑みを消して、野性動物みたいな無表情になった泉。
しかし、彼が口を開く前に____いつ戻ってきていたのか____美羽が、入り口付近に立っていた。
「......」
泉はギロリと美羽に視線をやる。
しばらくのあいだ、ふたりの無言の睨み合いが続いた。
「ちっ......。部外者は黙っててくれないかなぁ?」
泉の舌打ちにより、沈黙は破られた。
「てか、なんなの、あんた? 勝手にいなくなったと思ったら、こんな奴らと一緒にいるわけ?」
泉の問いかけに、言葉に、彼女は口を開こうとしない。
そんな態度にむかついたのか、泉は再度舌打ちをした。
「まぁ、もうあんたとは関係ないし、どこにいようと勝手だけど。でも、俺は今ゆうくんとお話ししてるの。
邪魔しないでくれるぅ?」
「......邪魔するつもりはないわ。けど、黙っているつもりもない」
ようやく、彼女は言葉を発した。
泉はピクリと眉を動かす。
「あなたに、真くんの人生を決める権利なんてないわ。真くんは『きれいなお人形』でも『あなたのもの』でもない。
____『Trickstar』の、遊木真くんよ」
「はぁ? 意味わかんないんだけど。こんな弱い『ユニット』、ゆうくんにはもったいないし、
そもそもゆうくんにアイドルなんて向いてないの。
俺はただ単に、現実社会を教えてるだけ」
険悪な空気がふたりの間に流れる。
泉は、もう美羽の存在など最初からなかったかのように、真に冷然と、吐き捨てる。
「いいけどねぇ、べつに。どうせ何もできずに失敗して、挫折(ざせつ)して、俺のところに戻ってくる。
遅いか早いかのちがいなのに____無駄に回り道しても仕方ないでしょう、って忠告してあげてるのにさぁ?」
そして、嘲笑(ちょうしょう)した。
「寄り道も、いいけど。どうせ自分の才能からは、運命からは逃げられないのにねぇ?」
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時