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「これが、その【ちょっと面倒なひと】。夢ノ咲学院における強豪(きょうごう)『ユニット』のひとつ____
『Knights』のメンバー、瀬名(せな)泉さん」
『Knights』。
鉄虎(てとら)が所属する『流星隊(りゅうせいたい)』と並んで歴史のある、強豪『ユニット』。
『S1』には参加しない、という話も聞いていたため____関係ないだろうと思って、詳しいところまでは調べてないという。
しかし、まさかこんなふうに絡んでくるとは。
「むかしから、なぜか僕に突っかかってくるんだよ〜?」
心底から嫌そうで、真は完全に血の気を失ってしまっている。
「ねぇ、ボソボソと内緒(ないしょ)話しないでくれる? チョ〜うざぁい!」
口癖なのか、みょうな余韻(よいん)を残す言い回しを繰り返している。
ともあれ、彼のフルネームは瀬名泉。
3年A組、所属『ユニット』は先ほどもいったが『Knights』、部活動はテニス部。
彼の美しいアイスブルーの瞳は、暗闇のなか、ギラリと輝いている。
そんな不気味な先輩は、真へ無遠慮に近づいていく。
「だいたい水くさいじゃない、俺はかわいい後輩を応援してあげようとしただけなのに。逃げちゃうんだもん、ゆうくん。
酷いなぁ、傷ついちゃうなぁ〜♪」
限界まで真に顔を近づけて、壁際(かべぎわ)まで追いつめる。
ついでのように、真緒は横に押しのけられてしまった。
「いちおう、忠告しようと思ってさ。何を張りってるのか、知らないけど......。
ゆうくん、才能ないんだから。アイドルとしてがんばるなんて、無駄なことはやめようよ?」
けれどその発言に愛はなく、ひたすら陰鬱(いんうつ)で辛辣(しんらつ)で____やはり冷え冷えとしてしまう。
「ゆうくん、見た目しか取り柄がないんだからさ。そんなダサい眼鏡(めがね)も、夢も希望も捨てて、グラビアの世界に戻っておいで?」
指先で、穢(けが)らわしそうに真の眼鏡をつまんでいる。
蛇(へび)に睨(にら)まれた蛙(かえる)みたいに、真は酷いことを言われているのに____
震えあがってしまっていて、反応もできていない。
泉は、真の過去と密接に関係している。
口調はどこまでも親しげだ____真のほうは、全身で泉を拒絶しているけれど。
詳しい情報を知っているのか真緒は____歯軋(はぎし)りし、拳をぎゅっと握りしめていた。
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作者名:白銀桜夢 | 作成日時:2018年8月9日 18時