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「壁を蹴らないで〜、大神先輩。うちの学院はアイドル稼業(かぎょう)のほうにお金かけてて部活は『おざなり』だから、あんまり予算をもらえないんですよ」
ヒョイッと弟、ゆうたの頭の上に手をのせ、その手の上に自信の頭をおいたひなたが言った。
兄、ひなたに頭を乗せられたことを気にしないゆうたが、頬杖をしながら、
「俺たち軽音部の部費とかもカツカツなんで、壁が壊れても修繕できませんから」
と、ひなたの言葉に補足するみたいに うんうん 頷きながら言葉を重ねた。
「うるせ〜よ！ どっちが喋ってんのかわかんね〜んだよ双子！ 同時に出てくんなややこしい！」
壁を蹴るのをやめたと思えば次は双子に八つ当たりする。
彼の言葉に双子は渋い顔をする。
「そんなこと言われても...というか、あんまり騒ぐと朔間(さくま)先輩が起きますよ？」
ひなたが言うと、棺桶が ガコ... と静かに音をたてながらゆっくりと開く。
しかし、誰もそれに気がついていない。
「知るか！ なんで俺様があんな吸血鬼ヤロ〜に気を遣ってやらなきゃいけないんだよ、あぁん？」
朔間、という名前に余計奮起(ふんき)する晃牙は、これまで以上に不愉快な表情をして叫んだ。
「呼んだかのう、軽音部の愛しの子たちよ〜♪」
どこか響く、気怠げな声が聞こえたのと同時に、棺桶が完全に開いた。
古き良きホラー映画のようだけれど、それを見つめる双子は双子は目を輝かせて喜んだ。
「あっ、起きた！」
「おはようございま〜す、朔間先輩！」
ひなた、ゆうたが、元気よく挨拶した。
棺桶から出てきた人物は昨日、Aと会っていた零だ。
朔間零、夢ノ咲学院アイドル科3年B組、部活動は軽音部(部長)、所属ユニットはUNDED(アンデッド)。
「おやあ？ 葵くんが2人いるような気がするのう♪」
どこか老人めいた口調、態度で、零はおかしなことを言った。
「俺らはもともと2人いますよ〜、双子なんですから。寝ぼけないでください！」
「そうですよ〜」
零の右隣で膝立ちするひなた、零の左隣に立つゆうたが言った。
きゃっきゃっ という花を咲かせたようなのほほんとしている空気を晃牙が許すわけもなく、
「うがあああ！ 呑気にしてんじゃね〜よ！ 和むな！ ぶっ殺すぞ！」
と、大声で叫んで切り裂いた。
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作者名：白銀桜夢 | 作成日時：2017年10月29日 17時
