思い馳せる姫君 (ページ23)

今日:17 hit、昨日:55 hit、合計:31,268 hit

phrase２１ページ23

放課後____

　Trickstarの4人は、噴水広場で練習を何度も何度も繰り返ししていた。

　その光景を、誰もいなくなった3年B組の教室から覗いているA。

　彼女の席は窓際の一番後ろという、便利なところであった。

　何も映さない瞳でじっと彼らを見つめるA。

　明星スバル。

　一見、何も考えていない馬鹿に見える彼。

　だが、こんな学院でも空気を読まずに夢を追いかけて、好きなものは好きだと胸を張って言える、とても清々しい少年だ。

　しかし、誰もそんなスバルを理解できず、関わるのを避け、彼はこの学院で浮いてしまった。

　以前の彼は____ひとりで笑って歌って踊りつづけている、滑稽なピエロのようだったそう。

　遊木真。

　彼は、望まぬ方面で才能を見いだされ、それこそ偉い人の言いなりになって、それに従事しつづけてきた。

　心を殺し、思考を放棄して____ロボットのように。

　彼は、スバルと馬鹿みたいな冗談を言って笑いながら、みんなの一番後ろを、いつも楽しそうに歩いていた。

　そんな彼が、時々見せていたと言う、虚無的な瞳____表情、そこには裏が、哀しみがあった。

　周囲は、そんな彼を褒めたらしいが、彼の心はゆっくりと磨耗していった。

　ある日、ついに決壊し...彼の心は断末魔の悲鳴をあげて、砕け散ったのだ。

　今の真は、そんな残りかすを広い集めようと頑張っている。

(【スバルくん】のように、夢を追いかけることが...回りの人を楽しませようと笑顔を振りまくことすら、許されないなら____

　【真くん】のように、人間になることが、馬鹿にされ否定され、ロボットのように従順に動くことのみ求められるなら____

　今のアイドルたちのように、魂を切り刻んで、値札をつけて、売り払わなければ生きていけないのなら____

　この夢ノ咲学院は、本当に地獄だわ)

　この世の地獄のなかで、彼らはお互いに支えあって生きてきた。

　この学院の子たちは、アイドルである前に、一人の人間。

　心のある、人間たち。

　怒り、泣き、笑い、愛し、尊ぶ、人間なのだ。

　彼ら【Trickstar】は____そんなふうに夢を、生き様を否定された者たちが徒党を組んだユニットだった。

(【英智】、私は...)

　Aは手に持っていた資料を鞄に直し、鞄を持って教室を出た。

　そんな彼女は

(この学院に、革命を起こす____)

　迷いのない瞳をしていた。